Otun

道のOtunのレビュー・感想・評価

(1954年製作の映画)
4.6
フェリーニ作、『道』。再見。

大道芸人ザンパノ、その彼と共に旅をする女、ジョルソミーナ。

ガサツの代名詞の様な大男ザンパノ。
彼は、その胸の筋肉で鎖を切る芸を生業にしている。
また。バーで出会った尻軽女に二の腕を披露し、カッチカチやぞゾックゾクするやろとアッピールしたりする、とまぁ脳ミソまで筋肉で出来てるような男。

が、今や映画でシュワちゃんやドウェインジョンソンなどのモノごっつ俳優達を目の当たりにしている現代人の私達には、そこまで大した体に見えない。晩年のジャン鶴みたい。
おいおいその芸、成立してんのか、と思う。

が、そこが、観客にはとても滑稽に映る。人間が溢れる。
しがない粗暴な大道芸人としての説得力。リアリティ。
そして、その大男についていかなければ生きていけない弱い女、ジョルソミーナ。
彼女が『この小石にも何かの意味がある』と、後半アイデンティティを掴むシーンがむちゃくちゃ好きだ。

ちっぽけな、二人。
抗えない運命に翻弄される二人。
まさに小石の様にちっぽけで、哀しい哀しい、男と女。
『私がいないと彼は一人ぼっちよ』。

ラスト。
波打ち際のザンパノ。粗暴な大男が小さく見える。泣けてしょうがない。
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