Shelby

道のShelbyのレビュー・感想・評価

(1954年製作の映画)
3.4
大道芸人で粗暴な男ザンパノは、以前買った姉が死んでしまったことから、代わりとして妹ジェルソミーナを奴隷として母から買い取り、隷従させる。ザンパノの扱いの酷さにも文句ひとつ言わず、一緒に巡業をこなしていくジェルソミーナ。そんななか、事件は起きる。旅の最中出会った綱渡りの男をひょんなことから殺害してしまったことで、ジェルソミーナの中で何かが壊れ、気がふれてしまう。
ザンパノは、無情にもそんな彼女を捨て去ってしまうが、何年かして彼女がよく口ずさんでいたメロディーを巡業できていた街で偶々耳にする。

「この世で役に立たないものはなにひとつない。
この足下の石ですら大きな大きな意味があるんだから…」
この一言の持つ影響力のデカさといったら。
何一つ取り柄がないと嘆いていたジェルソミーナの心を軽くしてやるばかりでなく、生きる活力として心に響いたに違いない。
名作と謳われているのも分かるのだが、ただ、私にとってあまり納得が行く結末ではなかった。

最期にザンパノが流す涙。そこにはきっと、ジェルソミーナのことを愛されていたのだという確信と、やっとまともな感情をもてたということを示しているのだとなんとなく分かる。
ただ、どうしても自業自得ではないかとしか思えなかった。自分が捨てたことに対する自責の念を持つには遅すぎるのでは?
自分の元を去っていったザンパノのことを思いながら、1人寂しくどんな気持ちでその後を過ごしたのか。生きる目的を見出せず、最後の瞬間頭に過ったのはなんだったのだろうか。
そう思うと、ジェルソミーナのことが不憫でならない。あの田舎町にいるよりは幸せだったに違いない。けれど、果たしてこれが望んでいた結末だったのだろうか。

無くしてからやっと分かる自分にとっての大切な存在。人間らしい感情を持つには遅すぎた結末。
すれ違ってしまったふたりの運命が、あまりにも切なすぎて複雑な気持ちになってしまった。
Shelby

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