Kuuta

道のKuutaのネタバレレビュー・内容・結末

(1954年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

生きる事の悲しさ

ジェルソミーナは頭は弱いものの、天気を予期出来るなど特別な力を持ち、火と水を愛する孤独なマイノリティである。天上にいる綱渡りのイルマットは、彼女の理想だったのかもしれない。車内の彼と一瞬目があった時の、共感しあうような目の輝きが印象的(ザンパノとジェルソミーナは最後まで目を合わせない)。そのイルマットもまた、誰かと一緒に生きる道を選べないのだが。

不意に訪れる死。イルマットの「時計が壊れてしまった」という台詞は何気ない一言だが、人生の終わりを示しており、小鳥のさえずりとともに草むらに倒れるまでの一連の流れは実に生々しい。

「キリストの花嫁」として定住しない修道女。境遇の近いジェルソミーナはイルマットの音楽を披露し、彼の孤独を介した心の交流が行われる。

主人を失った馬がどこからともなく歩いてくる。「アメリカのバイク」と、キリストの乗り物である「ロバ」の対比。小石の例えで生きる希望を与えてくれたイルマットは、ジェルソミーナ同様に堕ちた天使である。結果的に2人を殺める形になったザンパノが、終盤1人で芸を披露する場面での引きの映像はあまりに残酷で、磔刑のようにも見えた。

酒に酔ったザンパノが二股に分かれた夜の道でふらつく。ジェルソミーナを置き去りにする場面でも感じたが、画面内で人同士が遠ざかる、という映画ならではの孤独の表現が素晴らしい。

ラストシーンは冒頭と対をなす夜の海岸。白と黒の波音だけが響く。ジェルソミーナがかつてイルマットを見たように、天を見つめたザンパノは、誰もいなくなった周囲に気付き、嗚咽するしかない。小石と星空には同じ価値があるはずだが、彼の周りには虚無的な砂が広がるばかりで、星に手が届くことはない。

最後の最後にイルマットの音楽が流れ、ザンパノにもかろうじてイルマットの孤独が継承される。初めてジェルソミーナと心が近づいた瞬間のようにも見えた。海岸のシチュエーション含め、旧劇場版のエヴァのラストを連想した。85点。