ぴのした

道のぴのしたのレビュー・感想・評価

(1954年製作の映画)
3.8
切ない。こんな切ない話だったんだね。単純に切れない愛と憎しみ。そこに音楽が切なさに拍車をかける。

物語が始まってからずっと、女は愛する人と別れ続ける。オート三輪に乗って、嫌いな男に連れられて。家族、サーカスのみんな、修道院のみんな、そしてラッパを教えてくれた男。

オート三輪の後ろから顔を出して、手を振る姿はいつも悲しそうで、だけどその度に少しずつ別れる時の感情は変わっていく。

そして最後に、自分が今度は置いていかれる番になる。あんなに頑固で自分勝手だったザンパノの「吠えることでしか表せなかった愛情」が別の表情を見せる。

あのバイオリンの男との会話もすごく詩的で良かった。小石がどんな役に立つかは分からない。でも何かの役に立っている。言葉が印象的な映画なのに、どんな言葉でもその素晴らしさを表せないのが歯がゆい。

冒頭とラストシーンが重なるように、海辺のシーンが重要な場面で出てくるのも印象的。日日是好日で2人が海辺で将来を語らうのは、これに重ねる意味があったんだね。