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鞄を持った女のFilmomoのネタバレレビュー・内容・結末

鞄を持った女(1961年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

①目線の物語。カルディナーレの目線は自分を幸せにしてくれるかもしれない大人の男に向けられている。騙して棄てた男を追いかけ、やがてその情婦に堕ちるかもしれない男の元へまで歩み寄る。一方、ジャック・ペランの目線は一貫してカルディナーレに向けられている。外すことができない。初恋の行き場のない感情を、一方通行の目線で表現している。この2つの目線が唯一本当に重なり合うのは結末近くの浜辺でだけ。目線は重なり、物語に終わりが訪れる。②美人に生れついただけで、幸福がいつまでたっても近づいて来ない。美人が薄幸になるのは昔から変わりがない。この物語の最後でカルディナーレはペランの将来のことを考えて別れを告げるが、もしもこれから一緒に行動したら幸せは訪れていただろうかと想像してみると、やはり幸福は訪れない予感が大きい。③ヴァレリオ・ズルリーニ監督の役者に対する演出は的確で、シーンごとで役者がすべき表情や立ち振る舞いを完璧に監督している。特に大人の男に嫉妬するペラン、ペランの恋心に気づかないカルディナーレ、気づいてからのカルディナーレの表情の変化は素晴らしい。映画演出の粋を見せられた気がする。
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