SHOHEI

県警対組織暴力のSHOHEIのレビュー・感想・評価

県警対組織暴力(1975年製作の映画)
3.8
関西倉島市に根を張る大原組の筆頭・広谷と癒着する悪徳刑事・久能。親友でもあるふたりは対立する川手組の土地買収計画を潰すことに成功、抗争は激化していく。倉島署に派遣された敏腕警部補・海田は署内にはびこる汚職に目をつけ、警察とヤクザの癒着を断固禁じる。やがて久能の手の及ばぬところで大原組への捜査が進み、広谷との関係に亀裂が入り始める。

『仁義なき戦い』キャスト、スタッフが再集結した東映実録路線映画。仁義なき〜で主人公を演じた菅原文太が今度は刑事を演じるも、これがただの刑事ではなくヤクザまがいの手段を常套とする強面の汚職刑事。松方弘樹演じる親友でありヤクザの広谷と公私をともにする。仁義なき〜での怪演が光った金子信雄、田中邦衛はまたも姑息な悪党に抜擢され安定のキャスティング。ただ個人的には腐敗のはびこった署内で唯一清廉潔白な立ち振る舞いをする梅宮辰夫の海田がかっこいい。あまりにもドス黒い作風にひとりで太刀打ちできる存在感を放っている。撮影開始は1975年の4月4日。劇場公開はその月の26日。製作期間はわずか3週間程度でありながら役者陣の脂の乗り切った演技と当時の深作監督の勢い(この年は監督作が4本も公開された)を見事にとじ込めた快作。序盤から広島弁でまくしたてるセリフの応酬。方言に聞き馴染みがなく、かつ音質も良くない為なかなか展開についていけないがなんとなくの人物関係は読み取れる。だが梅宮辰夫が出てくる中盤からはなんだか展開に引き込まれるように。暴力と暴言の浴びせ合いによるむさ苦しい空気感、そしてラストの「後には何も残らない」寒々とした結末による寒暖差に身が引き締まる。
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