第35回東京国際映画祭 鑑賞第6作『幻魔大戦』
〈アニメで見る東京〉という企画らしく、各作品共に制作当時の東京の風景がアニメで描かれている点が共通しています。
ーーー【あらすじ】ーーー
大宇宙の破壊者・幻魔による全宇宙の破壊の魔手は、遂に地球へと伸びた。
トランシルヴァニア王国のルナ王女は、宇宙意識体フロイのテレパシーにより戦士として覚醒。
地球を守るため、幻魔に敗れた敗残のサイボーグ戦士ベガや、高校生東丈(あずまじょう)ら超能力者たちを集結し、幻魔の脅威に立ち向かう。
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小説家・平井和正と漫画家・石ノ森章太郎が共同で作り出した『幻魔大戦』シリーズは、平井和正単独執筆の小説版『幻魔大戦』シリーズや、石ノ森章太郎単独執筆の『幻魔大戦』と派生。広げすぎた大風呂敷を畳むことすらままならなくなり、大半の作品が未完・打ち切り・断筆状態になっている……という、とんでもない作品です。
『幻魔大戦』シリーズに全く思い入れの無い身のため、これほど複雑なユニバースと化しておきながら、未完・打ち切り・断筆という実態を目の当たりにすると、どう評価すればよいか混乱してきます。
とりあえずイチ消費者の意見としては、「作品は責任もって完結させてくれ」という傲慢なお願いにつきます。全てのクリエーター達よ、頼む……頼むから、作品は完結させてくれぇ!!
で、とりあえず映画単体での率直な感想は、「超とっちらかってる」の一言。
脚本はおろか、プロット段階から崩壊してたように思えて仕方がないレベルで、かなりカオス。
「仲間を集めて戦いに挑む」という鉄板な構造なのに、時間を割くべきパートのバランスが取れておらず、非常にまとまりの悪い印象です。
特に、終盤の超能力者大集合に至る過程は、正直滅多に見かけないレベルで、おそろしく無理矢理感がありました。観客の感情移入は当然不可能レベルですが、主人公の東丈ですら、仲間を仲間と認識できるか疑問なほど、関係が希薄なままクライマックスに突入していますし。
ともかく、ニューヨークでの戦いに辿り着くまでに、時間をかけすぎではないでしょうか?
26話のアニメシリーズなら、各人にスポットを当てて話を展開できたでしょうから、キャラ造詣を丁寧に描けたでしょう。
しかし、映画という枠組みでそれをやるなら、大胆に取捨選択しつつ、不可欠な要素は示していかないと、厳しい。
"丁寧"と"しつこい"の紙一重と取れる重複演出や、無駄に長い東丈の物語は、見ていてかなり辛い。
「このシーンにこんな尺かける必要ある?」と疑問を抱かず見ていられるシーンがホントに少ないのも、きつい。
これは、過去を研究しブラッシュアップされたアニメが大量に供給されている時代に生まれた為に感じる、贅沢な感想なのかもしれません。
実際、「手間暇かかった動きしてるなぁ」とあっけに取られるアニメーションは多々ありましたし、作品の技術的クオリティは間違いなく高いと感じます。
でも、構成がね……。致命的ですよ、これは……。
角川映画アニメ作品の記念すべき第一弾であり、『銀河鉄道999』を爆発的にヒットさせていた りん・たろう を監督にし、アニメ映画の変革期にぶち上げ、まだバブル前の景気が良さそうな時代の日本を感じられる、そんなアニメだなぁと思いました。
本作の価値の本質はエポックメイキングであることにある、とでも言いましょうか。ある意味、歴史のお勉強として、劇場で見られて良かったです。