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大人は判ってくれないのruiのレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
4.5
集中力が人一倍なく、人一倍物音に過敏な私は実は映画鑑賞には向いていない。
劇場で観るにも前で人がゴソゴソすると気になるし
隣で何か食べもの食べられても匂いが気になるし
ましてや後ろに人がいようもんならもうたまらない気持ちになる。
背後に人がいるというのがどうにもこうにも我慢ならないのだ。

昔からそうだが、家で一人で映画をゆっくり観よと思うと誰もいない静かな時を狙うしかない。
自分の部屋がある恵まれた環境で育っていたならそれも可能だけれど、
貧乏長屋で育ち、親、兄弟の生活音が常にしているような環境では観れないのだ。


前置きが随分と長くなったが、
今朝も朝早くに目を覚まし、外が静かで暗い状況を狙って鑑賞をする。
トリュフォーの「大人は判ってくれない」


この手の邦題は少し構えてしまうものだが、名作として語られているものは原題の翻訳も名訳なのだと思う。
思春期の好奇心、悲しみ、不安、孤独を的確な心理描写で表現されていたことで、どこかで自分の幼少期と重ね合わせる部分があるのではないか。


ここではない場所に向かって走る主人公アントワーヌ。
出口の見えないものに向かって走る時の気持ちは希望なのか絶望なのか。
それでも、走る、走る、走る。
振り返った時の甘美な眼差しがあまりにも印象的で彼の心情に思いを馳せざるを得ない。
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