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大人は判ってくれないのHKのレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
3.7
ヌーヴェルヴァーグの旗手である「ピアニストを撃て!」「とつぜん炎のごとく」などのフランソワ・トリュフォー監督の大長編デビュー作。本人の自伝をもとに制作された。キャストはジャン=ピエール・レオ、クレール・モーリエなどなど

学校でも先生に注意されたり、家庭内でも父親と母親の夫婦喧嘩が絶えず冷え切った家庭事情にいら立ちを隠せせない年ごろの少年が、悪友と一緒に自由奔放に振る舞うことで思春期特有の欲求不満感を満たそうと反抗していく。

トリュフォーの自叙伝とは言われているがちゃんとした原作があるらしい。それでも一つの作品として見て、思春期特有のいら立ちを見事に描いていた。

小学校から中学校までは学校生活自体には辛さを感じていたものの、親との関係は充実していたし、先生にも従順だった自分としては、この手のいら立ちが一番感じやすい時期にそれを感じていないため、感情移入は難しかったがある種の新鮮味というのを感じた。

アウトドアではなかったもので、犯罪をしたり学校を抜け出して遊園地に遊びに行くという行動を取ること自体があまりなかったため、そういう光景を第三者目線で見ると、ちょっとばかり可哀想というか退屈に感じてしまう面がある。

しかし、常に父親と母親から疎まれたり、他の大人からも白い目で見られるようなことになればどこかに承認欲求を求めてしまうというのも判らなくもない。

クラスメイトに嵌められ勝手に悪戯などの主犯格に仕立て上げられたり、そのまま初期の印象のせいでどれだけ先生に真実を訴えたとしても信じてもらえず、そのまま犯人として扱われてしまう。

本来だったら愛情を与える存在である父親や母親が、ああも自分を毛嫌いしてくだらない理由で喧嘩をしていれば、知らぬ間に大人たちに対する信用というものが減ってしまうのも致し方ないともいえる。

結局年齢だけが上で、自分たちの都合や偏見を押し付けてくる冷たい大人たちには分かってもらえない。そんな思春期特有のいら立ちを見事に描いていたのだと思います。

個人的には、メリーゴーランドでの演出が一風変わってて好きですね。そんないら立ち忘れさせてくれるのが映画館とバルザックだというのがなんともいえないですね。

最後の海に向かって駆けていった時の顔が最早、純粋無垢な顔からかけ離れていって、悪い方向に成長してしまったような様相を見事に体現していて良かったと思いますね。どわねる君の心情の変化がよくわかる演出だと思いますね。

他にもフランス映画から引用を沢山しているのですがその手の映画も見てみたいですね。見れて良かったと思います。
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