くわまんG

紅の豚のくわまんGのレビュー・感想・評価

紅の豚(1992年製作の映画)
4.5
「これ観てニッコリしちゃうんならやるべきことをやれよ。」という、監督から我々ブタ共への、あまりに優しい応援歌。

見どころ:
再起と感謝の物語
何も残さない男の浪漫
浪漫さえも残す女の愛
即引き込まれるオープニング
プロペラ機こそが浪漫飛行機
物語に丸ごと包まれた反戦色
毒気がほぼゼロの宮崎駿映画

あらすじ:
第二次大戦前のアドリア海上空は、飛行艇乗り達のキャンバス。盗賊、用心棒、賞金稼ぎ。めいめいの生き様を人殺しの兵器で描く。それは、勝負であって戦争にあらず。
勝負に力を出し尽くした男は、女がいなけりゃ立てもしない。許され、叱られ、癒され、どやされ、散々愛されて、果たして男は素顔を見せることができるのか……。

男が格好つけて、女が愛想を振りまく。男が女のために強くなって、女が男のために弱くなる。男が雄らしく、女が雌らしく人生を謳歌しようとする世界。歪ながら、目も眩むほど純粋な舞台に癒やされる。

資本主義に牙を剥きながら(赤)、資本主義的金の亡者(白ブタ)をしていたマルコ。細やかで優しいけど幼いから、深く傷ついたら身動きがとれなくなって、己を偽って(ポルコ・ロッソと名乗って)逃避するしかなかった。

そのときはそれで仕方ない。でももうあれから何年経った?気づけば36歳、もうそろそろ腰をあげないと。見下していた男や甘えていた女に助けられ、マルコはやっと再びの空へ。

苦しくとも前を向くエナジーと、周囲への感謝を思い出させてくれる、珠玉の90分。最終章『風立ちぬ』へと通じる完璧な作品だけど、惜しむらくはスタジオジブリにまだフィオが現れないこと。