奈菜子

まぼろしの奈菜子のレビュー・感想・評価

まぼろし(2001年製作の映画)
4.0
フランソワオゾン作品4作目

バカンスの海で消えた夫
遺体はあがらない
目撃者はどこにもいない
その真相も過去も全く明かされないままただバカンスを終えて日常に戻った主人公の姿が淡々と描かれ続ける
彼女には消えたはずの夫のまぼろしが見えている
それを誰にも言わないのは、夫がいるのが彼女の日常だから
目を閉じて、微笑みとともに振り返れば、ほらあなたが食卓に座っている
夫は彼女の世界から去ったあとで、濃くて大きな影を妻にだけは見せ続けてるのかもしれないし、
彼女がまぼろしを見るのは理性によってか、無意識によってかも、観ているわたしたちにはギリギリわからない。
そんな彼女の二重の演技をシャーロットランブリングという最高のキャスティングで堪能できます。
彼女のふせるまつげの長いこと
どこか影のある微笑み
女性としても女優としても成熟した彼女をみることができるなんてなんという贅沢。
ラストシーンを観ると、海に本当に呑み込まれてしまったのは夫なのか、それとも彼女の心なのかよくわからなくなりました。
「あなたは万物となってわたしに満ちる」
ポスターにかかれたこの文章が見終わったあとはよけいに沁みてきます。
不在の誰かを思い続けることは至上の愛の証明なのかもしれないです。
奈菜子

奈菜子