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夕なぎのakrutmのレビュー・感想・評価

夕なぎ(1972年製作の映画)
4.1
30代の美しい女性ロザリー、彼女と同棲中の実業家セザール、彼女の元恋人の漫画家ダヴィッドの三角関係を描いたクロード・ソーテ監督の恋愛映画。フランソワ・トリュフォーの『突然炎のごとく』と同じように、2人の男性と1人の女性によるMénage à trois(3人のカップル)がテーマとなっていて、ラストシーンはまさにそれを暗示している。フランス映画などではこのような関係がよく描かれるが、彼らと異なる道徳・倫理規範を持つ我々日本人にはちょっと理解しにくいのかもしれない。

それでも、そのような三角関係が不自然ではないと思えるのは、クロード・ソーテ監督の演出や、三人を演じる俳優の演技によるところが大きいのだろう。解体業を営むやり手で強引な実業家の年上男性と、芸術家肌の繊細な同年代の男性という、全くタイプの異なる二人の男性の間で揺れるロザリーを演じたロミー・シュナイダーが良い。彼女の美貌は、二人の男性を虜にする子持ちの女性という設定に、十分な説得力を与えている。それ以上に素晴らしいのが、年上の男性セザールを演じたイブ・モンタン。ダヴィッドに心を奪われつつあるロザリーを取り戻そうと焦る姿や、彼女に去られて滑稽なほど落ち込む姿など、大スターとは思えない迫真の演技が印象に残る。もちろん、ダヴィッド役のサミー・フレイも良い。彼女をめぐって争っていた二人の男性の間に友情が芽生えるという、なかなか理解しにくいが、そんなこともあり得るだろうと思わせる展開も良い。ロザリーの一人娘を演じた子役の可愛らしさも良い。なかなか素敵な映画である。
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