80年代初頭、NYにおける最初期のヒップホップを映し出した鮮烈なフィルム。若きアーティストを中心にしたストーリーはあくまで添え物的で（それでもグラフィティがヒップホップへと合流する筋書きは興味深い）、当時のオールドスクールの文化を捉えた記録映像のような趣が強い。ラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティという“四大要素”が本作を機に広く普及・確立されたというのがやはり凄い。ストリートにおけるMCバトルが描写されていたのも個人的に面白かった部分。
地下鉄が通る雑多で小汚ない街並み、其所に住み着く人々の姿など80年代ブロンクス区のムードが印象的。インディーズ・ムービーゆえのチープな質感が却ってストリートの空気感を生々しく捉えている。そして当時の風俗の中で勃興したヒップホップ・カルチャーのエネルギッシュな熱量よ。The Cold Crush BrothersにFantastic Freaks、Double Troubleなど、いずれのアーティストもめちゃめちゃクールで痺れる。歴史や文化を解説するような内容ではないけど、スタイリッシュなグルーヴが当時のムーブメントを端的に物語っている興味深い作品。
