Mikiyoshi1986

顔役のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

顔役(1965年製作の映画)
3.6
8月12日は奇才・石井輝男監督の没後12年目に当たります。

黒澤明に代表される東宝でそれに逆行する作風を展開してゆき、東映移籍後は高倉健主演のギャング映画で順調に成功を収めていた石井監督。

本作は元々、東映ギャング路線の一端を担っていた若手・深作欣二が監督する予定だったものの、
後の「仁義なき戦い」で伝説の名コンビとなる笠原和夫と衝突し、プロデューサー俊藤と笠原の目の前でトマトジュースを吐いて(吐血の芝居)降板したという逸話が残っています。
ということで初の深作×笠原コンビ作は一旦おあずけとなり、深作は脚本のみのクレジット。

様式美に彩られた任侠ヤクザの世界を描いた脚本家・笠原和夫。
偽善と美化にまみれた任侠劇への嫌悪から、東映で独自の"暴力"を模索していた駆け出し監督・深作欣二。
そしてエンタメ性の高いギャング映画を展開し、器用にヒット作を飛ばしていた石井輝男。

関東最大のヤクザ組織が横浜埋立地の整地権獲得に奔走する一方、関東進出を企む関西勢力の手が忍び寄るという笠原風の任侠シナリオ。
そこから一変して、組織内の不条理を暴き、脇役の死闘も余すことなくスポットを当てるという深作風の反骨・暴力描写。
それらを一緒くたにまとめ上げ、壮大な展開にしようと思わせるも、独自の終焉を叩きつける石井風の采配。

短いながらもストリップシーンではどぎつい照明と演出によって異質な輝男カラーに染まり上がっています。
安部徹の最後のセリフがカッコいいし、
待田京平のラストも洋ポル写真との兼ね合いが最高。
鶴田浩二と高倉健の義兄弟が織り成す渡世のケジメとは…。

実質的に石井監督の東映ギャングシリーズはこれが最後となり、この次回作となる「網走番外地」では高倉健と共に不動の地位を確立することになるのでした。

そして長らくソフト化されなかった幻のカルト映画「恐怖奇形人間」をはじめ、「やくざ刑罰史」「元禄女系図」が10月DVD発売されるということで甚だ狂喜乱舞です。
Mikiyoshi1986

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