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ジャック・ドゥミの少年期のKotaのレビュー・感想・評価

ジャック・ドゥミの少年期(1991年製作の映画)
4.2
“彼にとって少年期は映画のネタの宝庫。”

宝物みたいな映画。“ロシュフォールの恋人”などで有名なフランスの巨匠ジャック・ドゥミ。彼の少年期がその後の作品にどのように影響を与えたかを、モノクロとカラフルを混ぜ合わせて監督の奥さんアニエス・ヴァルダが美しく描く。

ジャック・ドゥミの自伝的映画なのだけど、それすらも忘れるくらいの没入感。シーンのあとにドゥミ本人の作品のワンシーンが続けて流れる事でどのように幼い頃の経験が映画に反映されているのか分かり易く、所々カラーになるシーンはまさにドゥミが当時その目で見て焼きついて離れない鮮やかさなのだろう。彼の主要な作品は観てから挑むとより楽しめると思う(無論、観ていなくてもこの映画だけで完成度が高いから問題ない)。

フランス映画×美少年がどツボな自分にとっては最初から最後までずっと眼福。少年期のドゥミは三つの歳で三人の役者が演じるけれどみんなとても可愛い…。40年代の戦争が影落とすフランスのナント地方で、当時の街並みやファッションが楽しめるのも醍醐味。建物や小物はいちいちお洒落。

ジャック・ドゥミは本来自分自身でこの映画を撮りたかったが、病気が進行して撮影が出来なかった。そこで33年間連れ添った妻のアニエス・ヴァルダが彼の代わりににこの映画を作った。ジャック・ドゥミはこの映画が公開される前年に亡くなっている。それでも映画に惹かれ全てを打ち込んで、世界中に数々の名作を残した“少年”は、確かにこの映画の中で生きていた。撮影で使われた家は本当にドゥミが育った家だという。
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