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スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナスのrollinのレビュー・感想・評価

5.0
かけがえのない僕らのスターウォーズです。

チャリで爆走したシネコンまでの道。親の付き添い無しのはじめての映画館。誰一人ストーリーを把握していなかった帰り道。貴重な小遣いをペプシに費やし、ボトルキャップのトレードがキッカケで仲良くなったジャー・ジャー好きの変態T君は、今でも子供の様にスターウォーズのことを話せる大親友になりました。

「ピープルVSジョージ・ルーカス 」然り、本作の評価が一部大人たちの間で芳しく無かったことなど当時のrollin少年は露知らず。
遠い昔、はるかかなたの銀河系にひたすら夢を馳せるのでした。

何かが始まるという純粋な熱量。その無垢でポジティブなエネルギーは、シリーズ随一だと今でも思います。“前日譚”という概念を教えてくれた作品でもあり、映画その他あらゆるメディアに於けるエピソード0ブームの先駆けでもあるのではないでしょうか。後のBD版ではCGに置き換えられますが、ヨーダがかろうじてパペットの肉体に魂を留めていた最後の作品でもあります。

数ある名シーンの中で最も重要なのは、タトゥイーンを脱出する際のダース・モールとクワイ=ガン・ジンの歴史的邂逅。1000年振りに表舞台に姿を現したシスと最初にライトセイバーを交えたのがグレイジェダイであるクワイ=ガンというのがまた渋いし、さらにその先にはオビ=ワンの元へ走るアナキンの姿。このシーンのテンポやスリル、シリーズ全体を暗示する構図は全作品の中でも屈指の名場面やと思います。
「殺シスが静かにやって来る」ばりのグレート・サイレンス、ダース・モールの完成されたキャラクター。レイ・パークの迫真のアクションは、ジェダイのそれを全否定し、あらゆる制約から解放されたフォース・センシティブとして実にエモーショナルでリアリティがあります。尤も本作以降、あらゆるライトセイバー戦はただのパフォーマンスでしかなくなりますが‥。
フォースの真理に最も近づいた聡明で思慮深いクワイ=ガン。アナキンの母ちゃんシミ。ファントム・メナスには優れた台詞回しがいくつもあり、スターウォーズが壮大なスペース・オペラであることを実感させてくれます。
パドメと出会い、ポッドレースでの優勝を経験したアナキンは、シミからのキスに怪訝な表情を見せ、彼が一連の経験で少しずつ大人へと成長していることを窺わせるさりげない演出も見事。

とは言え自分が成長し、トトロを見失ってシニカルさを手に入れた後では確かに多くの問題点があることも理解しました。
ラルフ・マクウォーリーによる造型のユニバーサリティーを理解出来ず全てを破壊してしまったダグ・チャン。無敵の高速移動ジェダイ・スピード。ジェダイの技を知りながらクワイ=ガンのサイコロ操作を疑わないワトー。戦争の歴史を塗り替えたグンガン族のエナジーボール。シールドが全く通用しない恐るべき子供、ジェイク・ロイドetc‥

オリジナルトリロジーを自分たちの中で大事に温めてきたファンとジョージ・ルーカスの見ている方向にいつの間にかズレが生じてしまったことは否めません。
それでも本作には夢が溢れているし、あの映画体験が人生の大切な瞬間だったことは間違いありません。そして今尚膨張し、拡張し続ける夢のホイルス銀河史。
それはまるで当時実家の冷蔵庫にどんどんストックされていった開かずのペプシの様です。
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