山崎朋子のノンフィクション小説を、社会派監督の熊井啓が監督した、「からゆきさん」の物語。
作品中、当時の議員や軍部が出てきて、裏で日本自体が海外慰安婦を後押ししていた様を描いている。その為、憤懣やる方ない彼女らの墓は、全て日本に背を向けている、という驚愕の事実が描かれている。
溝口の「赤線地帯」にも出てきたが、貧しい家の女性を、女衒が騙して連れてきて、借金まみれにして働かせる手口や、娼妓の唯一の楽しみである着物を、裏で呉服屋と組んで、高く買わせて借金を増やす手口など、娼館の悪どさを包み隠さず描いている。
それだけで無く熊井監督は、語部である原作者をも弾劾している。
身分を明かさず、主人公を騙して辛い過去を語らして、内緒で作品を投稿していた事実を、ちゃんと描いている。
全てを白日の元に晒して、この蛮行に鋭い批判を浴びせているのである。
最後に晩年の田中絹代の存在感と、この頃の高橋洋子の演技力の素晴らしさは、筆舌に尽くし難い。