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サンダカン八番娼館 望郷のpongo007のレビュー・感想・評価

サンダカン八番娼館 望郷(1974年製作の映画)
3.9
 主に九州の貧しい農家に産まれ、食い扶持を減らすために親に売られて女衒に南洋に連れて行かれ、借金でがんじがらめにされて強制的に売春をさせられた無数の少女たちの物語。幕末に始まり、第2次大戦ごろまで、海を渡ったこうした「からゆきさん」は数万人に上るという。

 本作の主人公、おさきさんは、極貧生活から13歳ころに女衒に売り飛ばされ、ボルネオ行きに。ボルネオで何の仕事をするか聞いていなかったが、到着すると、売春宿に直行。すぐに売春を強要されてしまいます。売春したくないんだったら、借金2000円を返せと脅され、泣く泣く、職業売春婦になるのでした。

 世界中からいろいろな男が集まるボルネオでは、日本人売春宿が大いに栄えたそうです。元々親に捨てられ身寄りもない見知らぬ外国にいて、売春宿に閉じ込められているので、少女たちは諦めるしかなく、日々、売春をさせられます。

 相手はボルネオの現地人、ヨーロッパ白人、日本人です。カネで女性をどうにかしようということに罪の意識などなく、半ば強引に挿入と射精を繰り返すのでした。

 当然、女性たちには性病にかかるリスク、精神的に崩壊してしまうリスク、妊娠するリスクなど、様々なリスクがついて回ります。自殺したり、客に殺される売春婦もいたそうです。映画では、日本の軍艦がボルネオに寄港した際、売春婦1人当たり、一晩で50人の軍人の相手をさせられていました。

 こうして、自尊心もプライドも奪われ、ただひたすらに売春を強要される屈辱。心が痛みました。

 人身売買は形を変えて現代にもはびこっています。日本人女性が海外に行ったからゆきさんではなく、現代は逆ですね。貧しい海外の女性が日本に売り飛ばされ、売春を強要されている。歴史は連続性を持っています。我々は歴史から学んで、未来をよくしなければならない。人身売買を無くさなければならない。この映画を覩て、つくづく考えさせられました。
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