emily

ウェルカム・ドールハウスのemilyのレビュー・感想・評価

ウェルカム・ドールハウス(1995年製作の映画)
4.8
 学校では「ドブス」「レズ」といじめられ、家では要領の良い妹のとばっちりを受けて母から叱られてばかりの女子中学生ドーン。自分の居場所を見つけられない彼女の世界で、一筋の光を見出したくましく生きていく様をブラックユーモア満載に描く。

 確信犯的なポップな色彩に青春さながらのロックが疾走感を演出する。学校で子供達から残酷ないじめにあってるだけでなく、家でもうとましがられ、とにかくどこにも居場所がなくお先真っ暗なのに、偶発的にも淡い恋を見つけ、ちゃんとその暗い現実の中で自ら光を見出していく姿が、皮肉にも笑いを生み出す。シビアな環境下を描きながらも、ネガティブな中にほんのり温もりが見え隠れし、それが人間らしさに直結してるように思える。変わりたい羽ばたきたいと願いながら、同じところで地団駄踏んでいる。傍からみたらわかる事だが、当の本人は全く気が付いてないから、必死でもがき頑張れば頑張るほど笑いに繋がってしまう。観客はそれをみて笑っていながら、次第に自分と重なる部分を見出してしまい、気が付いたら主人公をいとおしく感じはじめてしまうのかもしれない。

  自分を理解し、受け入れて謙虚に生きる事。言葉にすれば簡単だが、なかなか難しい。ない物を求めてもがいても、ただの悪あがきにしかならない。同じ場所に居る。周りは何も変わらない。それが変わってみえるのが、自分が変わった時だけだ。現実ドーンの環境は全く変わらない。何一つ前に進んでない。同じ場所にいる。しかし彼女はほんの少し変わったように見える。それは現実を受け入れ、できる事をやろうとしているからかもしれない。何も変わらない現実。でもそれを捉える心が変われば、現実は全然別物に見えてくるはずだ。ブラックユーモア満載の中に、人間愛がしっかり潜んでいる、温かい作品だ。
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