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5つの銅貨の一人旅のレビュー・感想・評価

5つの銅貨(1959年製作の映画)
5.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
メルヴィル・シェイヴルソン監督作。

実在のコルネット奏者レッド・ニコルズの半生を描いた伝記ドラマ。
涙が止まらなくなった。全編を彩るジャズミュージックももちろん魅力的なのだが、それ以上に家族愛を描いた感動的なストーリーが胸を打つ。
コルネット奏者として成功への階段を駆け上がっていくニコルズ。最愛の妻・ボビーとの間に娘も生まれ、順風満帆の人生を送る。ニコルズと娘の触れ合いはほのぼのとしていて幸福感でいっぱいだ。なかなか寝ない娘に渋々付き合うかたちでポーカーをしたり、ジャズクラブに連れて行って一緒に歌ったりする。
だが、予期せぬ不幸が家族を襲うことでニコルズは苦悩する。このままコルネットを吹き続けるべきなのか、それとも家族のために大切にしてきた音楽を捨てるべきなのか・・・。家族と音楽の狭間でニコルズは葛藤するのだ。
そして、ニコルズの奏でる音楽を通じて家族がひとつになっていく様が感動的で涙が溢れる。妻子に対するニコルズの愛と、ニコルズに対する妻子の愛が結実する瞬間で、過去の悲しみや失望を全て打ち消す愛の強さと幸福感に満ちている。
ジャズシーンも秀逸。ルイ・アームストロング本人によるトランペット演奏は圧巻の迫力を生む。ルイの独特のしゃがれ声も耳に心地いいし、嘘みたいな満面の笑みも印象に残る。また、主人公ニコルズを演じたダニー・ケイも素晴らしい演技。コルネットを演奏する際の自信と喜びに満ち溢れた表情と、自責の念に駆られ人生に絶望した表情。別人レベルに陽と陰の演技を巧みに使い分けている。ニコルズの歌はダニー・ケイによるものだが、コルネット演奏はレッド・ニコルズ本人が担当している。ルイ・アームストロングとレッド・ニコルズによるW本人のジャズセッションは何とも贅沢な気分を味わえる。クライマックスに演奏される『聖者の行進』も素晴らしい。
ちなみに、ニコルズが率いるジャズバンド「5つの銅貨」のメンバーにはグレン・ミラーもいる。本作と『グレン・ミラー物語』を併せて鑑賞すると一層楽しめると思う。
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