April01

ジャッカルの日のApril01のレビュー・感想・評価

ジャッカルの日(1973年製作の映画)
5.0
「ジャッカル時代」なるものがあった。
何かのタイミングで本作を観て(リアルタイムではない)、その世界に夢中になってしまい、フレデリック・フォーサイスの原作を読んでさらに夢中になり、ほとんどジャッカルに恋していたと言っても過言ではないくらい。
ジャッカルは小説そして映画の中の人だけどリアルに思い入れのある人物像。

この作品は映画も原作も本当に大・大・大好き!

ジャッカルがカルスロップでないとしたら、いったいやつは誰なんだ。
彼の素性に関して最後に煙に撒かれる展開は背筋がゾワ、鳥肌もの。
本作最大の痺れる点。国籍すらわからない。ましてや出自も経歴も。
この仕事の過程で知りうる個性しかわからないのがポイント。
そこは原作に忠実に映画でも効果的に描かれている。
ジャッカルに思いを馳せて深い余韻が残る。


原作:
女性が絡むエピソードに心惹かれる
ジャクリーヌ
弟がアルジェリアで戦死して、その指揮官だったフランソワとの恋、反乱軍に傾倒し、パリの分子として能無し幹部サンクレアを凋落し情報を流す。

男爵夫人コレット
たまたま山荘で出会っただけで惹かれて、最初はジャッカルは彼女を作戦遂行に利用する考えはなく、純粋に女性として惹かれて彼からモーションかけて誘い一夜を共にしたにも関わらず、追い詰められる中、彼女を利用するしか選択肢がなくなった時点では、当初の単純な惹かれは消えて、冷徹な作戦に組み込まれたのは哀しい。
実際、そうなってからの彼の頭の中で、彼女は必要な歯車の一つでしかなく、作者が敢えてジャッカルの彼女に対する心情を描いていないゆえに、無機質なジャッカルの冷徹なプロぶりゆえに魅力が増す。
とはいえ、そこに想像力を掻き立てられる余地があり惚れる要因にもなる。

コワルスキーも堕ちるきっかけが、娘シルビアを想う父としての人情である点もジャッカルと対比としてよく機能している。

唯一、ジャッカルの人間らしい動機が描かれたのが、パルミを通じて、作戦がコワルスキーのゲロにより漏れたと知り、作戦遂行の動機づけを描いた部分。
引き返すべきか、それとも前へ進むべきか

カンヌの最高級ホテル、マジェスティック・ホテルにて
「勘定書が来た。彼はそれを見て、身がすくむ思いがした。べらぼうな値段だ!こういう優雅なところで優雅な生活をするには、いくらドルを持っていてもたりないだろう。」

彼は超プロだったけど、動機は金。難しい仕事と引き換えにこの世界から足を洗い、安定した生活を手に入れたい。
唯一生身の人間らしい欲、無機質でない泥臭さを描いた部分。

ルベルと対峙し、お互いに名前を呼ぶ場面は痺れる。
かたや小男で冴えない風貌の中年
かたや精悍な百戦錬磨のプロの殺し屋
映画では一瞬で決着して省いているけれど。
April01

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