りっく

荒野のストレンジャーのりっくのレビュー・感想・評価

荒野のストレンジャー(1972年製作の映画)
3.8
陽炎から現れ、陽炎の中に去っていく男。「ペイルライダー」にも通ずる幽霊のような超現実的な男が大暴れする本作は異色の西部劇だ。そんなオカルト展開がギリギリ説得力を持つようなロケーションの勝利。広大な砂漠の「黄土色」と、生物の息吹が全く感じられないほどの鮮やかな青い海。その狭間にある街をイーストウッドはペンキで赤く塗り、怨念を炸裂させる。

町の利益のために、町中の人々が目をつぶり、暴力や不正を黙認する腐敗しきった世界の中で「正義」が炸裂する。制裁を与える人間が内側来るか、外側からくるかの違いはあるが、構造は「人魚物語」などと同様だ。

イーストウッドの暴力描写も執拗でねちっこい。保安官がむち打ちで殺させる悪夢的なシーンはカット割りの細かさやテンションの高さなど、暴力によって陶酔する人間のいやな部分をあぶりだす。
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