幕のリア

精神の幕のリアのレビュー・感想・評価

精神(2008年製作の映画)
3.9
相田和弘監督作品
観察映画第二弾
「精神」

たまに見たくなる斯様な日本的ドキュメンタリー作品。

釜山国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞 (PIFF Mecenat Award) 受賞
ドバイ国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞受賞
マイアミ国際映画祭審査員特別賞
香港国際映画祭で優秀ドキュメンタリー賞
ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭で審査員賞

原一男のような恣意的な演出は無い。
小川紳介のような異常とも思える細部に及ぶ好奇心は無い。

精神を病むかどうかの一線。
コップに水をなみなみと注ぎ、コインを一枚ずつ入れていく。
そのコインの大きさや厚みは人それぞれ。
表面張力の限界はどこにあるのか。
慰撫するどころか、"そんなの大した事ないから"と自分の体験談で何事も測ろうとし、人の話も聞かない人はよくいるだろう。

"働かざる者食うべからず"などと嘯く自分。
腰に命綱は付いているのか、足元のちょいと下に安全ネットは張っているのか、と目を凝らしてみる自分。

精神を病んだ人達の波動が容赦なく伝わってきて辟易と見始めたのが、何のバイアスもかかっていない観察映像から徐々に自分の心の襞の様子が垣間見え出す不思議。

患者さん達の言葉の正確さに、果たして自分は自己弁護無しにどれだけ客観的に事実を語れるのかと問うてみることになる。
幕のリア

幕のリア