Azuという名のブシェミ夫人

ロング・エンゲージメントのAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

ロング・エンゲージメント(2004年製作の映画)
4.0
愛するジャン=ピエール・ジュネ作品再見フェス、ひとりで絶賛開催中♡

さて、第四弾はこちら。
ジュネが描く第一次世界大戦・・・どんな風になるんだろうとジュネジャンキーな私は興味津々だったけれど、『アメリ』からジュネの世界に入った方はギャップに驚いたかもしれませんね。
『デリカテッセン』や『ロストチルドレン』でも主人公達は悪と戦っていましたが(アメリも悪戯で)どちらが悪とは言えない“戦争”をジュネが取り上げるっていうのが新鮮でした。
と言っても戦場はあくまでも回想シーンであり、主人公は『アメリ』でも主役を務めたオドレイ・トトゥ。
婚約者マネク(ギャスパー・ウリエル)の戦死を聞かされるも、彼の生存を一途に信じ続けるマチルド(オドレイ・トトゥ)。
戦場で一体何があったのか、マチルドは探偵を雇い調査をすることに。
そんな戦争+ラブストーリー+謎解きな物語。

あまり個性を主張し過ぎず、ジュネにしてはごくシンプルに仕上げてはいるものの、人間の表情を画面いっぱいに見せるクローズアップの撮り方やどこかファンタジーな美しさはやはりジュネだなと嬉しくなる。
『アメリ』同様黄色がかった画は、不思議とノスタルジーを感じさせるし、冷酷になりがちな戦争映画の雰囲気を柔らかいものにしてると思う。
ジュネの“陰”の部分が戦争の傷となって痛ましく描写されるけれど、彼の映画にはいつだって根底に『愛』がテーマとしてあるから好きなんだ。
マチルドの絶え間ない愛がどうかどうか報われますようにと、観ているこちらも祈るように見守る。

ただね、これはジュネも解説で語っていたことですけれども、フランスの俳優に馴染みが無いと(いや、馴染んでいても)戦争場面での人物が誰が誰やら分からないという点がなかなかに致命傷でしてね。
髭もじゃだらけだし、みんな同じように見えちゃう。
マネクの生存の謎解きが全体の主軸になっているからには、登場人物たちの名前と顔が一致してないとついていけない。
オープニングからマネクを含め5人の兵士が軍法会議にかけられた受刑者として紹介されますので、しっかり観て予習しておきましょう。笑

それにしてもお馴染みのジュネ組メンバーであるドミニク・ピノン、ジャン=クロード・ドレフュス、ティッキー・オルガドを始めとして、ドニ・ラヴァンやマリオン・コティヤールにジョディ・フォスターまで出演しているのだから豪華!
ジョディ・フォスターは英語圏の女優では珍しくフランス語を流暢に話せるそうで、ほんの端役ながら流石の存在感で素晴らしいです。
自分から志願して出演されたそうで、ジュネも絶賛してました。
あと、ドミニクさんのマチルドを温かく見守る優しい眼差しがとても好き♡
作品ごとに全然違うキャラクターを演じてくれるドミニクさん、いつもありがとう!
ギャスパー・ウリエルとオドレイ・トトゥの二人も可愛らしく、灯台のシーンがお気に入り。
この二人の子供時代を演じた子役達も微笑ましくてキャストが秀逸です。

ラストは作品の全てを集約させるような、非常に美しく素敵なシーンになっていますので、戦争ものが苦手な方もご覧になって欲しいです。