鳥さんの瞼

トレインスポッティングの鳥さんの瞼のレビュー・感想・評価

トレインスポッティング(1996年製作の映画)
4.4
「自分の性別が違ったら自然に楽しめたかも」と思う作品がたまにありますが、本作はこれ。

語られる対象は皆男の子だし、悪ガキのノリにもピンと来ない。
学生時代こういう子いたなと思えど、実体験から遠すぎてつかめない。

つかめない原因が本当に生まれの性別かはさておき、
男の子に生まれ育ってから観てみたいな、と思ったのは事実です。

いまの私には主要人物の精細もわからず、最後まで誰にも愛着を持てませんでした。
(ダイアンさんは率直に可愛くて盛り上がりました……。)
私が彼らと同性ならば、刃物を携帯している髭面の方に何かしら感じて好きになっていた気がします。魅力的なキャラクターだと思いました。

でも、わからないなりにも楽しめました。
人気映画なだけあるってことなんでしょうか

本作に関しよく言われていることとして、
ごく下品な描写もありますが
音楽が陽気で、割合さっぱりした気持ちで視聴できます。
冒頭のカルメン(ハバネラ)の刻みとSEのタイミングがあっているのが個人的にはすごく好き、ぐっと掴まれました。

また、色も明るめに整っていたのでそのお陰でかなり中和されている気がします。
全体を通してオレンジ(朱色)が印象的でした 猥雑でポップ
主人公の、髪色に合わせているのか途中までずっと黄色の服なのも特徴的。
度々のビリジアン、ピンクも可愛かったです。

主人公が単身都会に行くシーンのカットで急に色がはっきり、ごちゃごちゃし始めたのも新鮮で良かったです。

映像は、
離脱症状のシーンだけでも観てよかったと思える面白さ。脳内虚像を現実の創作物におろす、という仕事はいつでも偉大ですね

短いカット単位でみると横長に流れる動き、前景越しの奥行きをだす構図がよく見られた印象があります。目がのっぺりせず退屈しませんでした。

いちばん美意識を感じたのはライティング。知らんけど
少なくともカラーライトや人影の出し方が不自然なほどお洒落で目を奪われました。


最後まで観た話の感想としては「特段メッセージ性が無くて面白かったな」でした。
ドラマチックでもなく、エンパワメントされる成長物語でも無く(解釈次第ですが)、かといってギャグや露悪に振り切れているわけでも無い
起伏のないストーリーを濃口ソース味で味付けしたら面白く観られた、といった印象でした。
ラストは爽やかで好き

とはいえ、上記は単に私の感受性の問題です。
逮捕されたり赤子や友人が死んだりしているのが起伏のないストーリーなわけないし……
今生のうちは、感性が育ってからまた観たいと思います。
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