にっちゃん

虹の女神 Rainbow Songのにっちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

虹の女神 Rainbow Song(2006年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

この作品では特別な出来事は起きない。あるのは誰かの日常と別れ。
永遠に続きそうな毎日が薄く層を重ねるような感覚。作品を通して強く感じたそれは、私達が日々生きている感覚にとても近い。まるで人の一生を映画の中にギュッと詰め込んだような、そんな作品だった。

あおいと岸田くんが出会ってから、少しずつお互いを知っていく過程がとても好きだった。段々と距離が近く、存在が大きくなっていく。上手くいかないもどかしさ、じれったさ、意地を張ってしまうところ…2人の心の描き方が繊細で複雑で魅力的だった。

市原隼人、上野樹里が作り出す空気感は、役ではなくて素なんじゃないかと思う程自然。言葉選びと人柄がピッタリ。
そして蒼井優…ほんとに盲目なのかもと感じるほどリアルだった。めちゃくちゃ演技が上手い。

34歳女子について。
「そういう感じね…!」と少し驚いてしまった笑 そのくらい演技が上手かったのだと思う。特に表情。
映画の空気感と市原隼人の演技が一部だけ変わる。一緒にいる人が違うだけでこんなにも違うんだなと思わされた。あおいと一緒にいた岸田くんは本当に嬉しそうに笑っていた。
不思議な虹を見て、最初に見せたいと思ったのは、あおいだった。

この作品の特徴的な部分は、死の描き方が現実の感覚に近いところかなと思う。
冒頭に出てくるあおいの死や亡くなったあおいを迎えに行く家族の姿を見ても、何故かずっと実感が湧かなかった。
映画で誰かが死ぬ時というのは、その終わりの瞬間に向かって全てが進んでいく事が多い。でも、岸田くんとあおいが出会い積み重ねた時間は、常に未来に向かっていた。
誰かを突然失う時、そこにゴール設定や受容期間はない。「嘘でした〜!」と笑って飛び出てくるんじゃないか、と呆然としてしまうと思う。私が感じた「実感が湧かない」という感覚は、まさにこれだったのかなと思った。

届いていた虹の画像と蒼井優の「最後に聞いたのは岸田さんの声かも」「ばかだなぁお姉ちゃんも岸田さんも」という言葉が切ない。ラブレターに書かれた伝えられなかった『好き』という気持ち…。


考えれば考えるほど作品の魅力に気付けるのに、正直1回目はあまりぐっとこなかったから不思議…。泣いたけどさ…。どこか伏線を期待してしまってる自分がいて「そういう観方良くないぞ〜!」となった…。
何回か観ることで、ひとつずつ消化できて、刺さる作品だと思う。刺さる度にスコアを上げていこうと思う。

大事なものを見失いそうになった時、また観てみたい。好きな人には好きと伝え続けようと思った。
にっちゃん

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