KanaiSatoru

アメリカン・ビューティーのKanaiSatoruのレビュー・感想・評価

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)
4.2
アメリカンビューティー

ゴールデンウィークで名作を振り返る1人劇場をやっていました。
そんな中でアメリカンビューティーを改めて見直しました。
この映画は一言で言うと「家庭崩壊をコミカルに描くドラマ」として紹介されています。
そしてこの映画はなんとアカデミー賞作品賞を受賞しています、どうしてこの映画がこれほどまでにアメリカで受けたのか、日本にいる私には分かりませんが、おそらく「アメリカ家庭あるある」なのではないでしょうか。

アメリカ市民はこの映画を見て自分の家庭に当てはめて背筋が寒くなる人もいれば、自分の知人の家庭を思い浮かべてニヤニヤする人もいるのでしょう。😏

この映画が見る人にわかりやすく伝える構図はケヴィン・スペイシー演じるくたびれたお父さんと、隣に住む海兵隊のお父さんが非常に対照的に描かれている点です。

ケヴィン・スペイシーは家庭で全く権限がなく、威厳がなく、娘からも妻からも虐げられています。
その上、プライドだけが高く、見る側としてはどうしようもねぇお父さんだなぁと言う印象を受けるようストーリーは進みます。

一方隣人のお父さんは生真面目で頑固で家の中の全ての権限を握っている、常に間違うことのない絶対君主として描かれます。
そんな2人の対照的なお父さんが今後どのような行動変革を起こすのかそこが1つの見所となっているのです。

物語は娘の友人に性的妄想を描き始めるケヴィン・スペイシーを面白おかしく笑、描きながら進んでいきます。😁

ケヴィン・スペイシーは、思い切って会社を辞めたことから執着することがなくなり、自分を守ろうとかよく見せようという意識がなくなったことで、自己変革をなしとげます。
ケヴィン・スペイシーの顔が次第にりりしくなっていくのがとてもよくわかって、そういう意味でとにかく素晴らしい役者だなぁと思います。

この辺から若干、ネタバレ含むのでご注意ください。

さて、2人の男の人生を対照的に描くと言う意味では、隣に住む海兵隊のお父さんとケヴィン・スペイシーは最初と最後で立場が完全に入れ替わっているように見えます。🤭

ケヴィン・スペイシーは、会社をクビになり、妻の浮気が発覚し、娘との関係も修復できない中で、自暴自棄になり事件を起こすのかもしれないと思わせつつ、実際に事件を起こすのは隣に住む海兵隊の男だったと言うオチです。

ラストシーンは正直驚きました。
どうしてあんなことになってしまったのか?🤔
巻き戻して考えてみると、海兵隊の男は常に正しくいることを自分自身に強いていて、自分がゲイであることを絶対に悟られてはいけない、そして自分自身に対する裏切りでもある、そんな葛藤に悩まされていた中で息子がゲイであることがわかって爆発してしまう。
これはおそらくですが息子への嫉妬だろうと思いました。
自分も解放されたいそんな願いがケヴィン・スペイシーの前で初めて解放された瞬間があの車庫のシーンだったのだと思います。

しかし海兵隊のお父さんは、ケヴィン・スペイシーに受け入れられなかったと言う事実で、再び正しくなければならないと言う脅迫観念に負けてしまった。
それが最後の犯行に至らせた、と言うところでしょうか。😔

そうして考えると、面白おかしく見ていましたが、この映画はつくづく人の複雑な心理に基づく行動が引き起こす出来事のオンパレードだなぁと言えるでしょう。
アメリカの社会に限らず、どこの誰にでもあることこと。
自分に正直になれないとか、自分を偽ってしまうとか、虚勢をはってしまうとか、そんな難しい人間の心理を描いたドラマと言うことで、個人的には85点です。

個人的には希望のあるシーンで終わって欲しかったなぁ。😆
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