「アメリカン・ビューティー」
冒頭、動画撮影する女。男の声。空撮、自己紹介、平凡な日常、目覚まし時計、シャワー、妻と薔薇、隣人と犬、娘と彼氏…本作はS.メンデスが99年に監督したドラマで主演のK.スペイシーを始め作品賞等オスカーに輝いた名作。物語は娘の美人友達に恋をする中年親父の妄想により、周囲の人々が徐々に狂わされ始める…まず主人公宅以上に隣人宅の家庭状況がヤバく気になる…其々の美学を追求する者達をコミカルに描き、米国の有様を垣間見せる。にしても登場人物がイカれすぎ…規律を絶対にする元軍人や麻薬を売り、ビニールや動物の死体に美を見出す軍人の息子、豊胸手術したがる娘、不動産王と寝て、射撃を体験する妻、脅して会社を辞め娘の同級生に恋する父、自意識過剰な恋相手等かなり強者揃い。普通の家族や隣人も観客として観察して見ると普通ではなく、其処には空虚な人生観を見せ付けられる…劇中のシーンに合わせて流れるジャズやロックも興味深く、彼らの心情や体質を表す。本作は悲劇に終わるか、喜劇に終わるか観る者の解釈で決まるだろう。この映画を観ると本音を漏らすと家族崩壊すると感じるし、数多くあるホームドラマとは一線を超え、英国人監督目線から描く米国の夢の崩壊を見せる。凄くオリジナリティある90年代終わりの名作で繰り返し観たくなる一本だ…。
