Masato

ザ・コミットメンツのMasatoのレビュー・感想・評価

ザ・コミットメンツ(1991年製作の映画)
4.6

俺たちは負け犬じゃない

アラン・パーカー監督作品。アイルランドのダブリンでソウルバンドを結成したバンドメンバーたちの青春音楽コメディ。

ハードな社会派とソフトな音楽の両面を持つ監督の音楽の側面が遺憾なく発揮された傑作。ハイテンポで最後の最後まで駆け抜けていく青春と死ぬほどカッコいいR&B音楽が最高に気持ちよくてみんなに見てほしい映画。同じダブリンのシング・ストリートが好きならハマるかも。

チームワークは完全にズタズタでクソだけども、音楽をすると途端に最高の一体感とグルーブが生まれる。痴情のもつれと喧嘩ばっかしで最悪なシーンの連続、結末も普通に考えればビターだが、それを悲観的に受け止めずにひたすらに爽やかに滑稽に描いていくのが素晴らしい。

あの瞬間に才能ある人間たちが運命のように一同に集まったことへの究極の賛美というか、過去の人生を振り返ったときにこんなことやあんなことあったけど、みんな一番輝いていたよねって思っちゃうような、まるで自分の思い出を見るかのように、その一瞬一瞬の輝きをハッピーに描いている。良いことも悪いことも過ぎ去れば良い思い出。それぞれがどんな人生を歩もうとも、音楽のためにがむしゃらに駆けずり回ったお前たちは負け犬じゃない。

なによりもみんなの個性が凄まじく、本当に自己主張強めのアホばっかだけども極端に品が無くて底抜けに明るいところが好き。ワーキングクラスの底力を感じる。だから絶対に憎めないし、どんなにひどくても多幸感があって笑顔になれるんだよな。青春コメディの一番大切なところだけど、本当に良くできていて最高。

「ダブリンにはソウルが必要だ。俺たちは黒人だ。」っていうのも、監督はジャンルやテイストが違えど同じ文脈で描いているんだなと納得できる。常にイギリスに蹂躙されてきたアイルランドの状況をアメリカにおける黒人問題や文化と重ね合わせている。ミシシッピーバーニングがイースターエッグみたいに描かれているが、本意としては彼らがソウルを歌うのは、黒人がゴスペルやソウルを歌い始めたことと同じなんだということだ。アイルランドの複雑で見えにくい社会背景を自然と分かりやすく描いている。

主題となる音楽も良かった。アイルランドだからロックとかと思っていたんだけど、まさかのソウル。R&Bは一番好きなジャンルなので聴き応えはバッチシ。本当に最高の曲だった。サントラ直行。アラン・パーカーの音楽センスが光る。
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