メタ

ウィッカーマンのメタのレビュー・感想・評価

ウィッカーマン(1973年製作の映画)
4.0

性、宗教

さすが、カルト映画。
色々と強い。


・宗教vs宗教という構図

この作品の構図は、科学合理的な信念と伝統宗教のぶつかり合いというものではない。そうではなく、主人公である男もキリスト教の信者なのだ。彼の価値観からは、島の慣習は異端に見える。受け入れられない。

彼は、自分の宗教的な価値観のもと、他の宗教を否定しようとする。ここに違和感が残る人は多いだろう。なぜ、宗教をもってほかの宗教を否定できるのか、と。とくに、キリスト教にそまっていない私たち日本人には奇妙に見える。

西洋、キリスト教一元主義の暴力さが見えてしまう。

そして、そんな彼が「島の論理」にとらわれていく。



・祈り、彼の強さ

信仰を持たない人間が、彼のように生贄にされていたならどうなっただろう。この作品の主人公は、火につつまれながら神に祈る。彼の信仰心は本物だった。不条理に殺されてしまう彼にも、希望があった。

科学が広まり、死後の世界、神の存在、生きる意味などが不定になっている。そんなわたしたちは、火に包まれる瞬間、ほとんど絶望しかない持てないだろう。信仰という希望の装置をもっていないからだ。

そういう意味で、この映画のラストは「信仰」の強さ、癒しも教えてくれる。宗教というものを、ただただ否定するべきではない。意味があるのだ。なぜなら、まだまだ私たち人は不完全な生物であり、死に直面しているからだ。こうした、死への接近という視点は、宗教の特色でもあり、生きる幸福感ともつながる感覚だ。

こうした人間と信仰の関係についても、実は示唆的な映画だとおもう。

リメイク版の主人公は、信仰を持っている演出がない。彼も、オリジナルと同様に、騙され火に包まれる。彼に希望は見えず、より悲惨なシーンだった。信仰心があるかどうかという違いが見える。
メタ

メタ