けーはち

ウィッカーマンのけーはちのレビュー・感想・評価

ウィッカーマン(1973年製作の映画)
3.5
スコットランド・ハイランド西部。行方不明の少女を追って、警部はサマーズアイル島を探索するが、そこはキリスト教以前の土着信仰による奇祭の村だった!

★閉鎖的で独特の因習を持った「田舎怖い」系ホラー。また、ケルト音楽と共に歌い踊るシーンは満載で、フォーク・ミュージカルとしても良作。村人は楽しげであるが、主人公や観客は異質さを感じずにいられない。その断絶感を、軽快で異国情緒溢れる民族音楽が醸し出してくれる。

★昭和の日本の「田舎怖い」系ホラーだと、高度成長期で都会と田舎で文化の断絶が大きく、都会人は洋服なのに、地元民はモンペとか農作業着、身分の高い人は和服だったり、服装文化ひいては風俗習慣からして完全なる異質さを感じさせるんだけど、本作は英国の映画だからそれはない。みんな一応文明人。「田舎怖い」系ホラー大好きな日本国民としては、今ひとつ物足りない。

★しかし、本作を観てみると、見事に文明人の目玉を飛び出させるようなケルトの呪い系の因習がバリバリ出てくる。中でも敬虔なキリスト教徒が一番ウギャーッってなるのは性への開けっぴろげさ。豊穣と生、産めよ増やせよは表裏。貞操観念はユルいわ、男根信仰、性的なまじないや儀式を学校でも教えているわ、全裸で火を飛び越えたりするわ。主人公の警部は極めて敬虔なクリスチャンなので、この光景を見てウギャーッってなるわけだ。そして彼は「生贄」という可能性に至り、行方不明の少女と対面するが……。

★現代の文明人にとって彼らの信仰がいかに異様に見えようとも、クリスチャンはむしろこの島ではマイノリティであり、キリスト教的道徳を大上段から振りかざして説教する主人公は、この島では全く愚かで嘲笑されるべき存在。人々が絶対的価値と信じているモラルが決してそうではないと示すことで、主人公や(キリスト教文化圏の)観客を揺るがすというテーマ性を秘めた、カルトの名作である。

★独特の因習を残した「田舎怖い」系ホラーとして見た場合、日本にももっと強烈な作品は多いし、強烈さを極める場合『食人族』みたいなところへ行き着くんで、そういった意味では割とおとなしい作品か。ともあれ、淫靡な雰囲気と音楽がかなりの良さ。