安堵霊タラコフスキー

ウィッカーマンの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ウィッカーマン(1973年製作の映画)
4.7
パッケージにもなっている、燃え盛る大型の木製人形を見てから気になってしょうがなかったこの作品をようやく拝めたのだけど、案の定中々に衝撃的な映画となっていた

ジャンルは一応ホラーだが、行方不明の少女捜索がメインでホラーより金田一シリーズのような土着的ミステリーの方が趣的には近いこの作品は、独自の宗教を作った島のクリストファー・リーら不気味な島民が実に怪しく、スローモーションの夜の集団青姦や男根崇拝、裸の女性たちの謎の儀式、そして後半の奇妙な仮面を被っての祝祭等結構なイカれ具合のシーンが羅列され、不可思議だけどホドロフスキー映画のような魅力が感じられた

そしてこの映画では唐突にミュージカル要素がぶっこまれるが、それもまた狂気を孕んだものがあり、見ていてここまで不穏さが漂うミュージカル描写はダンサーインザダークくらいしか思いつかないというほどの異質さを含んでいた

そんな奇妙奇天烈な描写の数々と終盤で明かされる真実の後、ようやくラストにあの木製巨大人形が出てくるのだが、それがまた蜘蛛巣城を髣髴とさせるほど尋常ならざるシーンになっていて、あまりに危険な撮影風景とかも容易に想像ができ、文字通り開いた口が塞がらなかった

正常か否かというのは育った環境次第で変わるもので、おそらくこの作品で行われたことは島民には正常な行為だろうし、逆に彼らには敬虔なキリスト教信者の主人公こそ異常な男に思われたのだろうけど、そうは思いつつもやっぱりこの作中の人間にはドン引きせざるを得ない

ともあれこの作品の存在もエル・トポや動くな!死ね!甦れ!といった衝撃の名作同様に自分の記憶に強烈に刻まれることと相成った