木村建太

フォーリング・ダウンの木村建太のレビュー・感想・評価

フォーリング・ダウン(1993年製作の映画)
4.3
最高に狂ったマイケル・ダグラスが狂ったやつにしかできないやり方でこの世の不条理を指摘(殺したりしつつも)してくれる痛快な映画…だと思ってしまう…。

メニュー写真とまったく違うまずそうなバーガーを提供するバーガーショップに乗り込んだり、予算を消化するためだけの邪魔な道路工事をバズーカでぶっ飛ばすシーンは本当に爽快なんだよ…。一切セリフを使わずにさまざまな工夫によって、その時代のアメリカの雰囲気や主人公のいらだちの感覚が表されている導入もすごいし。

D-フェンス(ダグラス)はどう考えても常識人ではないしワガママなだけのキチガイかもしれないが、本当は真面目で曲がったことが許せないだけの良い奴なんだ、と擁護したくなる。元奥さんはもうちょっとD-フェンスとちゃんとコミュニケーションを取ろうと試みてほしかった(もちろんD-フェンスの側の非も別れられて十分なくらいあるのかもしれないが)。娘への愛はまぎれもないものなんだし…。あと実際「殴って」はいないんでしょ…?はやとちりだったんじゃないの??とか、語ろうとすると感情的になってしまう。

こんなに同情を覚えて応援したくなるような映画中の人物は他にいない。ダグラスと対峙する老刑事もまた「はぐれもの」の哀れさを発散し続けていて、応援したくなる。終盤のはぐれもの同士の対決は悲しくて背筋が震える。

万人が楽しめるわけがないけど、ある種類の人々を冷静には語れない興奮に叩き落とすことができる点で非常に優れた映画だと思った。
木村建太

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