らんらん

あゝ声なき友のらんらんのレビュー・感想・評価

あゝ声なき友(1972年製作の映画)
3.5
戦争末期、渥美清が所属する部隊は南方へと転戦したのだが渥美清は病気により内地へ帰ることに、その時に部隊員たちに遺書の受け渡しを頼まれたのだった

終戦後、なんとか日本に帰ってきた渥美清は遺書の受取人を探すのだがそのほとんどがどこに行ったのかわからない
さらに自分が生活していくだけで精一杯の戦後の混乱期、なかなか探し歩く余裕と時間がない
それでも託された遺書を全て届けなければと、自分の生活を犠牲にして受取人を探し続ける、、、

【感想】
劇中ではラストまで戦後8年間の日々が描かれています
そもそも遺書を届けるって時点でいい話じゃないし、特に感謝されるわけでもなく
むしろその反対で、今更こんなもの持って来てって、つらい思い出の戦争を蒸し返すようで、実際に遺族に手紙を届けても嫌な思いをしてばっかりで、、、
南は鹿児島から北は北海道まで、その旅費にしたって全部自腹
それでも配達を続ける渥美清の姿が見ていてつらい

感動モノっぽくも出来そうなストーリーなんだけど、すっごい現実的に淡々と進んでいきます
なんて言ったらいいか難しいけど、、、戦争によって人生を狂わされた人たちを訪ねる的なストーリーになってます
そのほとんどが癒えない心の傷を抱えていて、渥美清が来ることでまたいやな思いをしちゃうっていうね
こんな配達続けてたら病んじゃいそうなお話、実際後半に行くほど渥美清もやつれていきます
それだけに戦争が生み出す悲劇を生々しく描けていると思います

渥美清が企画に関わっていて、「渥美清プロダクション」なるものを設立してまで映画化した作品なんだとか
皆さん出演シーンは短いんですが、凄い豪華キャスト(小川真由美、倍賞千恵子、長山藍子、市原悦子、悠木千帆etc)な映画でもあります

印象的だったエピソードは
受取人倍賞千恵子は米軍基地で死体洗いのバイト、出征した弟と待ち合わせをした博多を離れることができない
受取人市原悦子は温泉宿で渥美清を按摩する、帰り際にもニアミスするんだけど本人だと気づかないまま別れちゃう
受取人志垣太郎は親戚一家皆殺しの死刑囚で三ヶ月前に処刑されていた

特に志垣太郎のはもう少し早く届けてあげられたら、、、って思わずにいられない辛いエピソード
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