菩薩

ナイルの娘の菩薩のレビュー・感想・評価

ナイルの娘(1987年製作の映画)
3.6
夢の様な現実と現実の様な夢と、人間生きて行くにはどっちも必要だし、夢ばかりを追いかけても、結局現実はすぐ後ろを追いかけて来る。外からの文化が浸透し変わりゆく台湾、ケンタッキーでのバイト中には中森明菜の「DESIRE」が流れ、ウォークマンにポケベル、少しずつ私生活は外に持ち出す事が可能になってきた。それとは対照的に家庭はどこまでも家庭的、カチカチっと四角の枠の中に収められた食卓の上には変わらぬ日常が流れているが、そこに母はおらず彼女自身もなんだか噛み合わない自分の立ち位置を探しているかの様に映る。アイドル然としているヤン・リンではあるが、個人的には噂のC-Girlこと浅香唯に見えたり、たぶんタブーの酒井法子に見えたり…なんて思ってたら突然うさぎが(碧では無い)出てきたもんだからその後は完全にのりピー目線で見ていた。たしかにその可愛らしい顔面とは似つかわしく無いオフロードバイクの乗りこなし、タバコの蒸し方…となるとあのタバコは本当にタバコなのか…?と疑問も残るが、ディスコのシーンではさほどサイバーせずに落ち着いていた。彼女の恋は唐突に終わりを告げる、彼の死をもって、消えた兄の死も唐突に告げられる、ラジオと、一本の電話をもって。ピンク色に輝きを放っていたネオンの灯は落ち、残された彼女はウサギを手に扉の奥へと消えて行く、静かな風が吹き、その扉もひとりでに閉まる。ナイルの娘は王を救えなかった、彼女はこの先、どこに旅に出るのだろうか、寂しそうな彼女は、誰に抱きしめて貰えるのだろうか、俺で良けりゃ…抱きしめてやるがな…。
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