【コマとコマの間】
ジェームズ・ガン監督の自警ヒーロー系のアクションコメディ。
〈あらすじ〉
冴えない負け犬人生を送る中年男のフランク。ある日、最愛の妻サラが、セクシーなドラッグディーラー、ジョックに入れあげ、彼のもとを去ってしまう。そんな時、神の啓示を受けたフランクは愛する妻を取り戻すため、正義のヒーローとなり悪と戦うことを決意する。そして、自作のコスチュームを身にまとい、スーパーヒーロー"クリムゾンボルト"に変身した彼は街へと繰り出すと、工具のレンチを武器にチンピラ退治を決行するが...。
〈所感〉
確かオードリーのオールナイトニッポンの映画プレゼン回でジャガモンド斉藤さんが紹介していた作品の一つ。じゃなかったらこの安っぽいパッケージから絶対見る事はなかっただろう。パッケージで損してないかしら?
結果的にはすごく面白かった。何物でもないフランクのような男がヒーローになって悪者を倒し、弱い人々を救うのって夢もロマンもあるけど、実際問題ヒーローだって生身の人間だし、体も心も脆い部分があるはずだ。そんなヒーローであることの痛みの部分にフォーカスした作品だと感じた。割り込みした人の脳天を鈍器で殴るのは明らかに罪に対して罰が行き過ぎているし、その力を警察でもない彼が行使していいわけない。昨今話題に上がるYouTuberの私人逮捕問題に通じてくる。正義の実現のために果たして一般人が手をあげても良いのか?それはもちろん否である。しかし、例外はある。それは大切な人が傷つけられた時だ。その場合は本気でその相手を制裁すべきである。皮肉にも、クリムゾンボルトはサイドキックのリビーが打ちのめされた時に真の力を発揮した。火事場の馬鹿力である。この世の悪をしょうがないで済ませられない人。立ち上がるべき時に嫌でも立ち上がる人。それがヒーローの品格であり、その自覚がヒーローという造形を作り上げるのだろう。もはやそれは神に選ばれた者といっても過言でないくらい貴重な存在だ。カッコイイ!強い!コマの中のヒーローではなく、コマの外の情けない至って普通の男をコメディチックに描いた本作は並のヒーロー映画よりか感情移入できてハマれる要素があった。