びたみん

息子の部屋のびたみんのレビュー・感想・評価

息子の部屋(2001年製作の映画)
4.2
ナンニモレッティ監督作品。
とても良い映画だった。素晴らしい。久しぶりに感動できる映画に出会えた。

初めて観るナンニモレッティ監督作だったが、なかなか独特の作風ではある。
このシーンの次にこのシーンが来るのか、ここでこう話が展開するのか、など、通常の映画文法、なかでもハリウッド的なものとは一線を画している。

しかし、ストーリー展開や映像美など、至る所に、仕掛けや映画的な豊かさがあって、とても観ていて面白い。
随所に挟み込まれる精神分析のシーンなど、トリッキーなストーリーの展開の仕方が興味深い。なにか他の映画とは異なる雰囲気が全編に渡って通底している。

ただ、心の傷についての深い洞察は映画に深みを与え、単なるキワモノ作品でもないし、感動モノでもなくしている。家族が困難を乗り越える、いや乗り越えずとも、少しずつ前進していくその過程が丁寧に、美しく描かれている。
ラストのシークエンスなど、一連の流れにはとても感銘を受けた。

冒頭から既存の映画文法とは異なる作りだと分かってきて、グッと引き込まれ、一瞬のゆるみもなく、ラストまで話を引っ張っていく、素晴らしい語り口だったと思う。

物事がただ進んでいくことの尊さのようなものを、この映画から自分は見出した。
素晴らしい映画だった。おすすめです。

そして劇中で流れる曲、良いなぁと思っていたらブライアンイーノだったのか。ここらへんの選曲からもこの映画の異質さが分かる。
びたみん

びたみん