佐藤でした

息子の部屋の佐藤でしたのレビュー・感想・評価

息子の部屋(2001年製作の映画)
3.9
海の事故で息子を亡くした家族の物語。

事故の当日、約束通り二人でジョギングに行っていたらよかった‥。急用の電話を断り、あのまま食事を続けていたら‥。友達との約束に行かせていなければ‥。ダイビングの器具が欠陥品だったのでは‥。と、父はすべての可能性を考え、一つ一つ悔やむのだった。

一人で遊園地に行き、乗り物の中で泣いた。気分転換に行ったレストランで料理を待つ間にも、試着室に入って出ただけでも、涙が溢れた。家族それぞれにふとした瞬間、悲しみが襲う。

夫婦間も親子間も関係がうまくいかなくなっていた頃、息子宛に一通の手紙が届いた。それは息子のガールフレンドからのもの。家族はその娘に会ってみたいと思った‥。


何気ない描写がドキュメンタリーのようで、家族の一人が死ぬってこういう感じのかなと思う。何をしても何を見ても込み上げる悲しみは、生きている限り在り続けるのだろうけど、ラストシーンの海辺の早朝は、何だかあたたかくて清々しいものだった。

映画として、泣かせようとか、希望を見せようとか、共感して欲しいとか、あからさまに力を込めたという箇所がない。それが、複雑に出来ている“人の心”そのものに似ているから、この映画は身体に浸透するように感じるのだろうか。
佐藤でした

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