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息子の部屋のRのレビュー・感想・評価

息子の部屋(2001年製作の映画)
5.0
またまた来ました、地味ながら大傑作。息子の死というテーマだからといって、ドラマティックでベタベタでセンチメンタルな感動モノを想像して見ると痛い目に遭います。終盤に愛してた息子が死んで派手に悲しんでおわりーーみたいな映画ではなく、前半で息子があっけなく死んでしまう、そっからがメイン。息子が死んだ直後、家族の悲しみが一旦のピークに高まるときは、見てるこっちはそこまで言うほど悲しい気持ちにはならない。というのも前半で息子の人物像が特に詳しく描かれるわけでもないし、特にめっちゃいい奴なわけでもなく、とにかく普通の男の子やから。なかなかのイケメンではあるが。で、映画は死んだあとの家族の様子をものすごく自然でリアルに、乱暴な感傷なく、誠実に描いていく。そりゃそうだよ、息子が死んだあとに、それまでと同じように暮らしていけるはずがない。むしろ時間が経つにつれて悲しみがどんどん深まっていくのは当然のこと。いまもあたりまえにそこにいるはずの人がいない、もう2度と会うことができない、語り合って笑いあって抱きしめることもできない。もしかしたらその死は避けられたかもしれない、あのときこうしていれば、ああしていなければ……深く愛する人を失ったことのある人なら誰しもが感じたことのある悲しみと喪失感を、痛いほど思い起こさせるから見ててほんとにつらくなってくる。一見唐突なシーンのつながりや演出がひとつひとつ確実に胸に突き刺さる。そして、後半、あまりにも素朴だけど思いがけない展開で空気がふわっと変わり始めるのがほんまにすばらしい。悲しみに終わりはないけど、人生は止まることなく続いていく。こんなに静かな感動で、これほど胸が震える映画は滅多にないよ、涙が止まらんかった。ブライアンイーノの曲も良すぎやしハマりすぎ。なんちゅーラストシーンや、こんなラストシーン見たことないし、もう2度とないやろ。ぜったい忘れられない。最高。
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