マピンターズボーン

ボルベール <帰郷>のマピンターズボーンのレビュー・感想・評価

ボルベール <帰郷>(2006年製作の映画)
3.5
【情熱のキスが全てを包み込む】

場所は風の強い土地フランスのカスティーリャ=ラ・マンチャ州。
あの風車に立ち向かうドン・キホーテの舞台としても有名な場所だ。
この迷信深い町で事件は起こる。

主人公を演じるペネロペ・クルスのなんと美しいフォルム。
胸と尻そして愛情と生命力を兼ね備えたその母性はまさしく母親そのもの。
それは全てを無条件に包み込んでしまうように思える。

この世界にでてくる男たちは全て彼女たちの不幸の原因でしかない。
この腐った男たちの欲望を乗り越え彼女たちはひたすら強くしたたかに生き抜いていく。

僕の経験則から言うと今まで恋人として友達として知人として沢山の女性と接してきたが彼女たちの心を覗けば覗きこむほど男を飲み込んでしまうほどの、ある特異な生命力に気付かされる。

その代表的な表現としてキスが挙げられる。

キスひとつにしてもソフトなキス、舌先だけで確かめ合うキス
舌を舌を貪るように絡め合うキス、リズミカルに触れ合うキス。

誰一人同じキスをする人はいなかった。
それは時と場所によって大きく変わったし相手との関係によっても大きく変わった。

カマキリのメスがオスとの交尾のあとバリバリとオスの生命を飲み込むように時として僕は同じ飲み込まれる感覚を何度か味わってきた。

僕は女性に会うたびにふと思う。
その唇は一体これまで何人の男の生命力を吸い取ってきたのだろう。
そしてこれからどれだけの男の生命力を吸い取っていくのだろう。

それほどこの作品の中のキスは愛情表現を超えた生命力に溢れていたのだ。

人は大人になり経験を積めば積むほど危機意識が高まり
より慎重となり身動きがとれず成長というものを止めてしまう。

そしてより安全な方向へ進み無難に事無きを得る。
そして経験なき若者の失敗をせせら笑うのだ。

ラ・マンチャのドン・キホーテは無謀にもその生命をかけて運命を切り開こうと風車に挑み続ける。彼の生き様を笑い者にするのは誰だろうか?
ひたすら前に進むことしか知らないその生命の塊を嘲笑し生きることを止めるに等しい行為をする者たちは誰だろうか?

どれだけおぞましい展開に逢おうと何事もなかったように彼女たちは前に前にひたすら前を向き全力で突き進むのだ。そう...まるでドン・キホーテのように。

それほどスペイン人のアイデンティティとしてドン・キホーテの精神は刻み込まれているのだろう。

つまづいたりすることは悪いことなのだろうか?
失敗することは悪いことなのだろうか?

何度転んでも何度つまづいても何度でも歯を食いしばって笑顔で全力に突き進むスペインの情熱が交じり合うそれはこの監督なりの女性への人生賛歌なのだろう。

438本目