スワヒリ亭こゆう

ボルベール <帰郷>のスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

ボルベール <帰郷>(2006年製作の映画)
5.0
僕にとってはペドロ・アルモドバル監督を好きになったきっかけの映画です。
観終わった後は脚本や映像、そして映画の中の女性達の生き方に拍手喝采を送りたくなる程、ホントに素晴らしい作品です。
何年か振りに観ましたが、完璧な映画と言えるのではないでしょうか?
僕はそう思います。


ペドロ・アルモドバル監督ってゲイなんですよ。
で、彼が作る女性の映画ってゲイだから撮れる演出がありますね。
男が作ると嘘だらけ間違いだらけになる。
女性が作ると過剰に女性の強さばかり描こうとする?
でも、この監督の撮る映画の女性には嘘偽りがないので、観てて清々しいんです。

例えば、主人公のペネロペ・クルスが家で旦那の死体を処理しているシーンがあって、その最中に隣人が訪ねてくる。
玄関に出て隣人とそこで話をするんです。
するとペネロペ・クルスの首に血がついてるんです。
映画の観客は首に血がついてるのを隠さないとって、ソワソワするんですね。
で、案の定、隣人に「首に血がついてるよ」って言われる。
するとペネロペ・クルスは「女には色々あるのよ」と言い返す。
このやり取りがペドロ・アルモドバルならではだなって思うんです。
男の監督では、このセリフをペネロペ・クルスに言えっていうのはセクハラになる。
女性ならそんなセリフ毛嫌いしそうじゃないですか。
なのでゲイのペドロ・アルモドバルならではの脚本なのかなって思うんですよね。

そんな女性に対して嘘偽りのない監督が撮る女性が主役の女性讃歌の映画。
年に1本出会えるかどうかの完璧な映画だと僕は思います。


敢えて、あらすじは書かないでおきますが、主人公はライムンダ(ペネロペ・クルス)ですが、カンヌ映画祭で史上初の本作に出演した6人が女優賞を同時受賞するという事がおきました。
先程も書きましたが【女性讃歌】が、この映画の特徴です。
序盤のサスペンスからコメディ、ファミリーストーリーにクライムムービーの要素もあります。
とにかく女性が美しく強く、そして傷ついて涙を流し、それでも生きていく。
女として母として娘としてのお話は暗さと明るさが入り混じってるんですが、映画としては素晴らしい脚本だと思います。
久しぶりに映画を観て泣きそうになりました。
素晴らしい!