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ジェイムス・ディーン物語のpikaのレビュー・感想・評価

ジェイムス・ディーン物語(1957年製作の映画)
3.0
ジェームズ・ディーン出演作を1個も見たことがない状態でアルトマンの流れからこのドキュメンタリーを見る暴挙に出てみたが、むしろ知らずして見てよかったとは言えないまでも取っ掛かりとしての価値は十分で、なにより見て良かった!

故郷での親族や街の人のインタビューは事実だろう、しかし若干誘導的な内容ではあるし、彼の軌跡を辿る流れで語られるナレーションも、事実なのかよくわからないような印象で、やたらポエティックなところがジェームズ・ディーンを伝説化しようとする意図に感じられた。
語られるエピソードも伝説となったジェームズ・ディーンだからこそ価値のあるもので、同じような若者はおそらく何万といただろう、些細で普遍的なものでしかなく、「彼は成功すると思った」と言うような語り口も成功したから映えるだけで成功しなかった者たちと変わらない、でもそういう普通の若者たるエピソードや半生を改めて描くことでジェームズ・ディーンの姿が身近に感じられ、そんな「俺らの一人」みたいな存在であること自体に価値があるんだと気付かされた。

中盤がすごく良かった。亡くなる直前に触れ合った人々のインタビューや、実際の言葉などがナレートされていて人物像が見えてきやすいし、「他者に迎合せず自分を貫く」姿勢が事実の積み重ねによって描かれていて、期待の新星が若くして夭折したから伝説になったのではなく、ショービジネスの中で自分を見失わなかったから稀有で孤高の存在だったということが見えてくる。
序盤で提示された「ホンマかいな」というポエティックな彼を表す言葉に説得力を与えるべく羅列されていく展開が良い。答えから描いてそれを導き出す数式を見せるかのような流れが面白かった。
ラストで初主演作である「エデンの東」のテスト映像を初公開する流れも、原点回帰した映画の流れに観客の感情を沿わせていて良かった。代表作見んばなんねー。
それでも素材が少ない中で1時間超えのドキュメンタリーを作ろうとなると全体的に冗長で濃密とは言えない物足りなさはあった。仕方がないか。それにしては良くできてるのか。

「優しい人間になる勇気が欲しい、暴力は弱さの裏返しだ、本当に強いのは優しい人だ」
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