モスマンは実在する

哥(うた)のモスマンは実在するのレビュー・感想・評価

哥(うた)(1972年製作の映画)
4.3
強靭な精神で意志を貫くジュンの考え方には深く共感するので、始終拷問のようで辛かった。食事シーンでは咀嚼音がやたら大きく、一体どういう意味なのか分からなく思っていると「食わなければ死ぬ」という展開に繋がっていく。生き物として、これ以上どう分解しようもない本能的な問題が突きつけられるあたりに興奮した。

ジュンが生き様で思想を表すのに対し、没落寸前の富豪どもは口先だけ主語の大きな話ばかりするのが憎い。「もうそういう時代やない」だの「全部夢だ」だの、なんなんだてめえ!「自殺もまた夢のひとつに過ぎないのさ」じゃねえだろ今すぐ死ねこの野郎!!という印象。

48分あたりの濡れ場、「抱き合う二人が人目を避けようと襖を閉めたものの完全には閉まりきらず、二人の足元だけが見えている」というカットが非常に良かった。ものすごくエッチ。

影の多い日本家屋のなか、柱を拭く音が響き渡るさまには猛烈なフェチを感じた。日本家屋のなか、延々とカメラを横スライドさせていくのも良かった。