こたつむり

ミッドナイトクロスのこたつむりのレビュー・感想・評価

ミッドナイトクロス(1981年製作の映画)
3.6
大統領候補暗殺事件に巻き込まれた男の物語。
ブライアン・デ・パルマ監督らしい叙情的な作品でした。

ミステリ…と伺って鑑賞しましたが。
うーん。個人的で狭義な定義で言えば、ミステリではないと思います。ジャンルで言えばサスペンス…が一番違和感無いですかね。でも、物語としてはミステリとかサスペンスとか…そういうのは香料程度の風味であって、真に味わうべき部分は別の部分でした。

例えば、そのひとつとして。
主人公が音響効果係という設定の妙があります。この設定のお陰で心躍る場面が多いのですね。本作は80年代初頭の作品ですが「あー。映画の効果音ってこういう風に重ねているのだな」なんて呟いてしまうくらいに興味深い場面が続くのです。

その中で一番好きな場面は。
主人公が山の中で集音マイクを使って効果音を集めるところ。音と映像が一体化し、寂寥感から緊張感まで味わうことが出来る屈指の名場面だと思います。主人公を演じるトラボルタが音響効果係…というのも絵面上、ミスマッチで面白いですしね。それと、この場面で頑張っていたのはフクロウさん。うん。助演動物賞を贈りたいです。

それと、サスペンス風味を盛り上げる手段としても。この設定が活きているのですね。写真と録音した音を重ね合わせて事実を導き出す…なんて科学的なテクニックも鮮やかな限りです(まあ、それほど意外性に満ちた結果を入手するわけではないのですけど)。

あ。あとサスペンスと言えば。
序盤の“殺人鬼が女子寮を襲う場面”も。主人公の立ち位置を説明するだけで、お遊びに満ちた演出…と思いきや、実は物語の構成上、重要な伏線が隠れていたりするのも嬉しい限り。うん。こういう脚本の妙も本作の味わうべき部分だと思います。

ただ、そんな脚本も。
物語途中で雑な展開になるのが少々残念でありました。まあ、でも、物語で一番大切なのは上手く着地できるかどうか、だと思いますのでね。本作の場合、力技ではありますが途中経過の悪さを吹き飛ばすかのような着地が見事でありました。

というか、この着地点こそが。
本作で一番味わうべき部分(ネタバレに抵触するので詳しくは書けないのが残念です)。なので、どんでん返しとか意外な犯人とか…そういうミステリやサスペンス的な要素とは無縁の作品ではありますが、事前知識を仕入れない方が楽しめると思います。
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