ジャイロ

大樹のうたのジャイロのレビュー・感想・評価

大樹のうた(1958年製作の映画)
4.3
あのオプーが大きくなってる!!

友との会話。前々作、前作あってこそのこの台詞、この展開、胸が熱くならないわけにはいかないだろう…

まさかの電撃結婚に目を疑った。

そんなことがありえちゃうのが底知れぬインドの神秘なのでしょう(笑)

それにしても奥さんが何考えてるのか全くわからない。これを奥ゆかしいと言っていいのだろうか。確かなものなど何もない。運を天に任せて突き進むしかない。

ちょっとした影なのか、時折トムヒドルストンに見えてくるオプー。そんなはずないんだけどな…目かな?目がそうさせてるのかな…一気に親近感が沸いてくる。

奥さんが泣いてる!!

オプー「泣いてるの?」

奥さん「いいえ」

うそついてるーーー!!

そして、めっちゃ煙でてるーーー!!

いいの?

オプーと奥さんのやりとりのひとつひとつを暖かく見守っていられる安心感。なんだろうこれ、若い二人が微笑ましすぎて背中がむず痒くなる。あのオプーが…あのオプーがねえ…くっ

結婚してるのに絶交されちゃう勢いのオプー

あれ?こんな楽しい話だったっけ?前作までの悲壮感が無くなってる。恋が、愛が、モノクロの人生を色付けていく。オプーの人生に春が来たのだ。こんなに嬉しいことはない。


しかし、それは短い春だった…


大地のうた、大河のうた、忘れていた。そう、これは喪失の物語だった。人生の哀しみ、苦悩がいっぱい詰まった、さまよえる魂たちへの鎮魂歌だった。

人生に悲しみはつきもの

失ったものが大きければ大きいほど魂はより強く輝く

愛を失い、愛に餓えた魂に導かれ、失ってばかりのオプーの人生に希望を灯すラストのだるまさんがころんだ。憎んでいた存在が、歓びの存在に変わるその瞬間を捉えた、なんという美しいシーンだろうか。それは涙なくしては観られなかった。

雨にも負けず、風にも負けず、しかし嵐にはくじけそうになるオプーの人生。だけど、もう大丈夫だ。大地に根をおろし、大樹のようにたくましく生きていける。哀しみも苦しみも、人生って素晴らしいものなのだと改めて認識させてくれた。そんな映画でした。