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豚と軍艦のSCALAのレビュー・感想・評価

豚と軍艦(1961年製作の映画)
3.8
人間は欲、港は豚であふれる


横須賀の米海軍基地を舞台に、組織の末端のチンピラとその恋人の生きざまを描いた人間重喜劇、、、


重い喜劇と書いて、重喜劇。

確かに、戦後間もない時代背景や日米関係、売春に強姦、ヤクザのゴタゴタ、男女の壮絶な愛や死別といった比較的重い題材にも関わらず、それをブラックな笑いへと昇華していて監督自らの造語ではあるが言い得て妙だなと思った。

列車に飛び込んで自殺しようと掴まった看板が「日産生命」であったり皮肉っぽいシュールな笑いが散らばっているかと思えば、クライマックスの豚が放たれるシーンと駅に向かうラストシーンは爽快感に満ち溢れている。

まさか豚の大群にカタルシスを感じる瞬間が来るとはこれっぽっちも思ってなかった。

米兵に襲われるシーンに象徴されるカメラワークも面白い。天井から撮ったぐるぐる回るショットにこちらも地獄に落ちるような気分になる。

強くて芯のあるヒロインを好演した吉村実子は、先日観た「鬼婆」とは全く違う雰囲気を醸し出していてキュートだった。これがデビューとは恐るべし。


"てめぇたちは豚だよ"
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