パケ猫パケたん

Dolls ドールズのパケ猫パケたんのレビュー・感想・評価

Dolls ドールズ(2002年製作の映画)
4.7

【北野武の映画のキャンバスに、鮮やかな赤が加わる。「キタノ・レッド」、誕生の喜び。】



『Dolls ドールズ』 (2002)


北野武監督 第10作、彼のオリジナル脚本でもある。

当時、ほとんど無名だった、西島秀俊が主演に抜擢されている。

再鑑賞してみて、究極の、男女の恋愛映画🎦であった。


以下の三組のエピソードが、縦横に交差する。

・出世のために、婚約者(菅野美穂)を裏切り、別の令嬢と結婚式を挙げようとした男(西島秀俊)。茫然自失した、菅野美穂は薬物自殺。一命を取り留めたものの、半ば廃人に成ってしまう。社会からドロップアウトをせざるを得なかった二人は、逃避行をする。資金も無くなり、繋がり乞食と呼ばれるヒモで繋がった状態で、行き場もなく、都市や田園を彷徨する。青葉🌿、紅葉🍁や雪❄️の四季折々の自然の中を。心中するかのように。

・工場で働く男と、アルバイトの女は、プラトニックな恋仲だった。勤務する工場は業績が悪く、甲斐性の無い事に恥じた男は、いつも弁当をいっしょに食べている公園で、女に別れる事を告げる。「いつまでも、待ってる」と叫ぶ女。
三十年あまり、時は流れた。男(三橋達也)はヤクザと成っていて、冷酷非常な事もして、大きな組織の組長と成っている。男は気分転換に、ふとしたきっかけで、埼玉のあの公園に、昼どき行ってみた。そこのベンチには、なんと白美しい女💯(松原智恵子)が弁当を持って待っていた。素性を語らすに男は女のベンチに座る。美しいながらも、待ち過ぎて、不思議ちゃんに成っている女😿 そして、毎週通う男に、女もこころを開いて行くが、幸せな期間は短かかった。

・アイドルの深田恭子は、今売り出し中のピチピチギャル👩✨ 歌は下手っぽいが兎に角、溌剌としていてオーラが半端ない美人さん🎵 交通警備員の友重勉は、趣味はそれだけで、深田恭子🎈の追っかけをやっている。友重勉の孤独は深く、現代にも通じるリアルさと鋭さ。深田恭子は、友重勉や他の追っかけの名前を覚えている、性格もいい感じの娘👩✨ 同時にも根性ありそう、売れそうな人物。ある夜、アイドル深田恭子はプライベートのデート👫で自動車事故に巻き込まれて、顔面に大きな傷を追ってしまう。芸能界引退へ。美しかった彼女の顔を暗記した、友重勉は、なんと、自分の目を突き刺して失明する。美しいまんまの彼女の面影を記憶の中にとどめる為に😹 元マネージャーの岸本加世子を通じて、深田恭子と奇跡の再会をする、友重勉。盲目に成った彼の純愛に、感じ入った深田恭子は、友重勉と薔薇園🌹で小さなデートをしてあげる😿 恋の始まりかニャン😻 そんな友重勉の幸福は、束の間で、彼は事故で亡くなってしまう。

(エピソード、終わり。長くなってスミマセン🙇💦)


映画を鑑賞して観て、オイラ🐱自身が凄く驚いたのであるが、本作は、北野武の描く『シェルタリング・スカイ』(1990)みたいな、ロケーションの美に溢れた、恋愛ロードムービーである。(パケ新説⁉️🐱)

乾いたサハラ砂漠から、日本の四季へ
と大胆な変更。近松門左衛門の戯作の、
人形浄瑠璃・文楽『冥土の飛脚』への、更なる翻案。そして、ミニマルな演出が得意な北野武と、人形浄瑠璃の世界は、相性が抜群であった。

ここで、北野武と、ベルナルド・ベルトルッチとの取り合わせは、奇異に思われるかも知れないが、ジェレミー・トーマス、坂本龍一、大島渚と知人が重複しており、北野も、当時、流行りで最先端の、ベルトルッチの映画📽️を鑑賞して、感銘を受けている可能性は高いと思う。

満月🌕の描写、雪に付く足跡、縦横無尽に歩き続ける様、そしてその過酷さ、何よりエンドクレジットに流れる、久石譲の音楽のピアノの旋律を辿っていると、『シェルタリング・スカイ』のそれに被って来て、驚きと同時に歓喜してしまった😻🎵 やはり、ジェレミー・トーマスを起点として、彼らは連帯しているのだ。


さて、前回『BROTHER 』(2000)のレビューでは、北野武監督のマイルールその二、として、自死を扱わないと書いたが、この心中を描いた様は、マイルールその二には反しないと思う。

何故なら、この映画📽️は死を扱うよりは、寧ろ、日本のクラシカルな心中、純粋な形での、愛の終焉を描いているから。


山本耀司の衣装が色彩が豊かで美しい。ただし、実際に流浪している、菅野美穂と西島秀俊は、【ボロボロの衣装になっていた筈】であり、美しい衣装は彼らの錦(にしき)の心意気の象徴で、心象風景であろう。だから切ない。また、彼らを彩る日本の四季の美しさも、心象が混じったものでもあり、余計に美しく、だから、哀れでもある。色彩の中に、【現実と虚構の二重性】を感じられるかどうかが、評価の分かれ目となろう。


浄瑠璃人形のように整った顔の菅野美穂、彼女は演技も達者であり、また、アイドル役の深田恭子も美形で、声が素晴らしい。菅野美穂と深田恭子のキャスティングで、えもいわれぬ相乗効果を醸し出しており、また、それぞれの代表作に成っている。

公園で、お弁当を広げる、松原智恵子と三橋達也のエピソードは、やや陳腐かな。ここは少し気になる所ではあるが、後半の破局を描写する映像の繋がりは、痺れてしまう。


アイドル深田恭子と、交通警備員の友重勉のエピソードは、本来は届かぬ恋であり、幻想的で詩的ですらある。交通事故を電光掲示板で知る場面が素晴らしい。そして、傷を追った顔を見るのが、或いは現実が耐えられなく、自らの視力を消してしまう友重勉。谷崎潤一郎の『春琴抄』👀‼️かよ~って少しびひってもしまったが、これもジャパニーズ・クラシカルの古典、男の純愛を描いているので、泣けるよ。

(オイラ🐱も天海祐希たん👩✨が好き過ぎて、天海祐希たん👩✨が春琴で主演、オイラ🐱が三浦友和よろしく、佐助の役で、映画の共演をしたい❗と、狂った書き込みを2ちゃんねるに、「ネタ」として書き込んだので、この描写も他人事では無い。北野武はヲタクごころも分かってくれるんだなぁ🎵) 


(因みに、松原智恵子たん👩✨は、世代は違えど、天海祐希たん👩✨に顔立ちが似ているよね~🐱 菅野美穂、深田恭子と来ているので、タケちゃん、オイラ🐱と女性♀️🎵趣味が被るのかも~、まるで、ライバルじゃんwww )


そんな、友重勉の繊細なこころを分かってくれて、アイドル深田恭子と、薔薇園🌹でデート。色彩の赤みが強くて、現実味が無かったりするのが、少し怖いが、赤い薔薇🌹、そして白い薔薇🌹の香りに集中するかの演出が、嗅覚を刺激して、極めて印象に残る。その後の、ハーモニカの音色が物悲しい。そして、警官👮が血潮を洗う濃い赤い色と、オーバーラップする彼の働く姿。これも、天才的な演出だった。


繋がり乞食の菅野美穂は、闇夜の雪の中で、浄瑠璃人形に、或いは、痴呆が進んでしまって、人外なモノに成ってしまうかの感じ、フランケンシュタインみたいな歩き方、その演出の凄まじさよ。更に、ラストシーンは凄惨なものとなるが、同時に、純愛と心中の道を貫き通した姿、恋愛の究極を描いた、崇高さを感じる。だから、溝口健二の『近松物語』(1954)に、合い通じる情念を受けた。

そして、『シェルタリング・スカイ』には無い、日本の繊細な四季と、所詮は島国、横並び社会・村社会の限界、家父長制の危うさ、地表と国土の狭さも、同時に描かれている。

『あの夏、いちばん静かな海。』いや、それ以上に、北野武の恋愛映画は素晴らしい。特に、この映画🎦の後半の流れは奇跡的にも、美しく物悲しい連鎖が起きている。


一人佇み座する、松原智恵子、深田恭子、そして、『シェルタリング・スカイ』のデブラ・ウインガーに比して、恋愛が成就したかのように見える、菅野美穂の横顔の清々しさよ。


採点は、4.5+菅野美穂+深田恭子で、4.7点で、いや、松原智恵子たん(天海祐希たん似)👩✨も入れて4.8かな。オイラ🐱最愛の北野監督作品🧡の一本と成った。

芸術の秋の深さ🍁に、震える想い


2022年鑑賞 155本目


【後で、少し推敲します🎵】