ラブコメだ。愛と追憶のラブコメだ。
人生の岐路、この後の人生を決定付ける、その瞬間のラブコメ、でした。
30を過ぎた。当然色々あった。
そんな人間としての深みを増す季節、ターンで、良くも悪くも、激烈な事が度重なる。この後の30年、一番重要な30年を決定づける瞬間が満載。偶然も度重なると必然となり、肉体的に頼る時、フッと心が頼る時、様々な瞬間、即ち運命が動いていた。
“欲しいものを知り、
求める方法を学べ”
・・・どっちも大変だ。
ただ、自分が思う以上に、あなたは強い。
と、唐突に登場するカウンセラーは言った。そんな言葉から、違う時間が動き出す。
小粋でチャーミング。テレビ出身ながらアカデミーウィナーらしいリズムと愛らしさが久々に溢れる。
そして“画”。
綺麗な画、豊かなフレームだけではない、ここぞと言う時に重く、または輝きを増す。
初タッグを組むのは、(なんと!)ヤヌシュ・カミンスキーである。
一味違う、巧過ぎる筈だ。
しかも『ミュンヘン』(05)『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(08)と、『戦火の馬』(11)『リンカーン』(12)の間に撮っている!言わずと知れたスピルバーグの大作、その間を縫って撮る。その分、この都会派ラブコメディに向かう溌剌とした軽妙さや、小粋な動きが、大きな見所でもあった。(昼夜関わらず道路は水で濡れています)
オバさん顔のリーサは終始チャーミング、そして重さもあって、巧いなぁ、と思ったらオスカーウィナーだったんですね。
またもお頭の足りないオーウェン、愛嬌たっぷりのポール、みな愛らしい。凄いフレームと動きで、強烈な表情とアップが随所に登場するので見逃せない。
盟友ジャックも、トメらしくトメてます。
クライマックス手前、ヒロインが何故かテレビで観ているのが“クレイマーvsクレイマー”だ。何故なのか?は永遠の謎だろう。
ただ、70年代最期を飾ったクレイマーさん(79)と、80年代の幕開けを告げた普通の人々さん(80)により、それまでの混沌たるパワーは排除され、新しい世界、新たな問題、身近過ぎる人間関係が、映画的に語られる(新たな映画の)時代へとシフトした。その流れを汲むかの様に83年、その年の代表映画になったのが、デブラとシャーリー・マクレーンの“母娘”の33年間の物語だった。
そんな新たな時代変革と、その変革のテーマ性に触発され(たであろう)自身のデビュー作、その自身のルーツを振り返ったのではないか?(だから敢えてヒロインが運命の日の前夜に観ていたのではないか、観せたのではないか)と、この師走に妙にホッコリと、その作家の人生に魅せられた。
そして、どこか“曖昧さ”を必ず遺すジェームズ・L・ブルックスの、そう簡単ではない、とでも言いた気なラストシーンは、曖昧だからこそ沁みますね。