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可愛い花のfallenleavesのレビュー・感想・評価

可愛い花(1959年製作の映画)
4.0
ザ・ピーナッツのヒット曲「可愛い花」をフィーチャーした歌謡映画ですが、これがとんでもないカルトでした。まず、49分という短尺の作品であることで、登場人物の丹念な性格描写が端折られ、ほぼ全員情緒不安定な感じになっています。特に主演の岡田"ファンファン"真澄の演じるC調のレコード会社ディレクターは最高。ずっと軽い演技、オーディション中も終始株の情報をチェックしています。そのせいもあり馘首になりかけますが、そこに現れたのが救世主エミとユミ。このふたりをファンファンは当初適当に追い返そうとしますが、まわりが良いと言い始めたら都合良く調子を合わせて、契約しようとします。そこへライバル会社の専属歌手・平尾昌章大先生がきて、ふたりを引き抜いていきます。この引き抜きの手口が鮮やかすぎてなんだか恐ろしさがありました。さて、トンビに油揚げをさらわれたファンファン。そこへなんと引き抜き成功で得たマージン500万円を平尾昌章がなぜかファンファンへ全額渡そうとします。曰く「この金は先輩が受け取るべきなんですよ」と。ファンファンは平尾をかつて門前払いにしたディレクター。まるで意味不明です。遠慮なくその金を受け取ったファンファン。株へ全額ぶっ込みますが、なぜか大儲け。金が蠢く証券場にこれ以上ないバカ笑いを聞かせるファンファンがダブルで重なるシーンは狂気の沙汰です。大金を得てここまで狂った笑いをしている人を見たのは多分『蘇える金狼』の松田優作以来です。500万って言ったら1959年当時とんでもない金額だと思うんですが、それをいきなり躊躇なく全額株にぶっ込むファンファンの狂気が、ザ・ピーナッツのサクセス・ストーリーに圧勝してしまうカルト作でした。ファースト・シーンが藤村有弘のインチキ外国語から始まるのも最高でした。
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