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エム・バタフライのeiganoTOKOのネタバレレビュー・内容・結末

エム・バタフライ(1993年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

オープニングからエンディングまで、息つくことがないスピード感、無駄のない素晴らしいクイア的作品なのだけど、最後性器を見せて法的な男性である、と強調する必要があったのか?と考え込んでしまった。
女性性のジェンダーを誰もいない部屋でひとりのときも身につけているということはトランスジェンダー女性か、あるいは男性ではないという性自認のノンバイナリーなのだと思うのだけど、逮捕されたあと裸になるシーンは男性ジェンダーによるゲイ描写にしかみえない。
ということは、トランス女性だった場合は「この人はやはり男性なのだ」とスティグマを強化してしまうことにならないか…?という疑問。
でも、カナダ男性が最後に女装して自害し、中国人が生き残る、というのはマダムバタフライの植民地主義とアジア女性への客体化批判としてこれ以上ないくらいの結末。うなる…
文化大革命はもちろん批判すべきものとはいえ、資本主義やフランスが世界にしてきた愚行が描かれているシーンが少ないため、かなり一方的な中国批判が気になってしまう…
台詞でアジアの女性を植民地化していることを恥じる内容はちょくちょく出てきてカナダの白人男性監督の自己批判としては素晴らしいと思うのだけど、やっぱりちょっとバランスが悪いような…
中国人の監督が文化大革命を批判するのは革新的だけれど、白人がやるならもっとフランスのダメなところを強調しないと、など贅沢な要求。
素晴らしい作品だからこそ、イチャモンつけたくなるけと自分の解釈が間違っていそうな気がする…信頼しているクイアやフェミニズムの第一人者竹村和子の評を読んでみることにする。
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